予期せぬ来客
「こんなことの後だから、ゆっくり行きましょう」
CB750Fに乗る年長の男性が、皆に声をかける。
ナナハンライダーは一目置かれる。
教習所で免許をとった中免ライダーの僕らとは違い、彼らは試験場の一発試験で合格した実力派ライダーだからだ。
当時、限定解除と呼ばれていた大型自動二輪免許。
別にナナハンに乗りたいとは思わないし、要らないや
そう思って、受験しようとも思わなかった。
ログハウスの喫茶店にバイクを止め、それぞれが割り勘でコーヒーを飲む。
当時はまだパソコン通信もない頃で、オフというものはなかった。
ただ、ライダーたちはこうして喫茶店で、路肩の自販機の前で、あるいはユースホステルでバイクについて自然発生的に語り合っていた。
何かのキーワードがあれば、すぐに友達になれることは今も昔も変わらない。
一つだけネット社会の現在と違うのは、この出会いは一期一会だった。
ネット社会の今、コミュニティやウェブページをたどり再会することは容易だ。その場で電話番号を交換する必要もない。
当時、写真を後で送るために住所を交換することはあったが、通常はその場の別れが永久の別れ。
出会った友達は思い出の中にだけ生きている。
二ヶ月後
今年は水不足になることもなく、福岡の街は夏の盛りを迎えていた。
夏休みは実家に帰らず、いつものバイトを続けながら、福岡のアパートで過ごしている。
そんなある昼下がり、玄関のインターフォンが鳴った。
三ヶ月とったら一月タダにするという太っ腹な新聞屋さん、手をかざして病気を治してくれる親切な人が時々やってくるが、特に警戒することもなくドアを開ける。
そこには隣の部屋に住む商学部の同級生、高野が立っていた。
確か夏休みは、実家に帰ると言っていたはずだが・・
高野の背後に、初老のおいちゃんが立っていた。
「その節は、息子が大変お世話になりました」
学校名と名前を頼りに、学校に探しに来られたのである。
学生課の門前払いになりそうなところ偶然にも高野が居合わせて、ここまで連れてきていた。
「これは心ばかりですが・・」
差し出された封筒を受け取るわけにはいかないと思った。
救護に当たったのは僕一人じゃないですと固辞したが「せっかく来られたのだから、代表っていうことでいいやん」と高野が割ってはいり、受け取ることにした。
学生の一人暮らしゆえ、まぁ上がってお茶でもどうぞなどとは、これっぽっちも思いつかなかい。そもそも冷蔵庫には来客に出す飲み物が入っていなかった。
| 固定リンク | 0
「自動車/交通」カテゴリの記事
- 最後にKK線を走ってきた(2025.04.03)
- Yaeh(ヤエー)と名前がついてピースは文化になった(2023.09.27)
- 一方通行を逆走する自転車の一時停止義務が道交法から欠け落ちている(2023.01.04)
- 自転車運転者の意識が変わった 変えたのは「赤切符」取締(2023.01.03)
- 転倒したライダーの足が反対を向いていた(2022.11.18)

