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2008年12月29日 (月)

予期せぬ来客

 「こんなことの後だから、ゆっくり行きましょう」
 CB750Fに乗る年長の男性が、皆に声をかける。

 ナナハンライダーは一目置かれる。
 教習所で免許をとった中免ライダーの僕らとは違い、彼らは試験場の一発試験で合格した実力派ライダーだからだ。
 当時、限定解除と呼ばれていた大型自動二輪免許。
 別にナナハンに乗りたいとは思わないし、要らないや
 そう思って、受験しようとも思わなかった。

 ログハウスの喫茶店にバイクを止め、それぞれが割り勘でコーヒーを飲む。
 当時はまだパソコン通信もない頃で、オフというものはなかった。
 ただ、ライダーたちはこうして喫茶店で、路肩の自販機の前で、あるいはユースホステルでバイクについて自然発生的に語り合っていた。
 何かのキーワードがあれば、すぐに友達になれることは今も昔も変わらない。
 一つだけネット社会の現在と違うのは、この出会いは一期一会だった。
 ネット社会の今、コミュニティやウェブページをたどり再会することは容易だ。その場で電話番号を交換する必要もない。
 当時、写真を後で送るために住所を交換することはあったが、通常はその場の別れが永久の別れ。
 出会った友達は思い出の中にだけ生きている。


 二ヶ月後
 今年は水不足になることもなく、福岡の街は夏の盛りを迎えていた。
 夏休みは実家に帰らず、いつものバイトを続けながら、福岡のアパートで過ごしている。
 そんなある昼下がり、玄関のインターフォンが鳴った。

 三ヶ月とったら一月タダにするという太っ腹な新聞屋さん、手をかざして病気を治してくれる親切な人が時々やってくるが、特に警戒することもなくドアを開ける。
 そこには隣の部屋に住む商学部の同級生、高野が立っていた。
 確か夏休みは、実家に帰ると言っていたはずだが・・

 高野の背後に、初老のおいちゃんが立っていた。
 「その節は、息子が大変お世話になりました」
 学校名と名前を頼りに、学校に探しに来られたのである。
 学生課の門前払いになりそうなところ偶然にも高野が居合わせて、ここまで連れてきていた。

 「これは心ばかりですが・・」

 差し出された封筒を受け取るわけにはいかないと思った。
 救護に当たったのは僕一人じゃないですと固辞したが「せっかく来られたのだから、代表っていうことでいいやん」と高野が割ってはいり、受け取ることにした。

 学生の一人暮らしゆえ、まぁ上がってお茶でもどうぞなどとは、これっぽっちも思いつかなかい。そもそも冷蔵庫には来客に出す飲み物が入っていなかった。

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