うつ病に効果があるマラソン
東京マラソンを完走したい 【 3 】
マラソンに備えながら「東京マラソンを完走したい」という小説を書いた。
ある版元の新人賞に応募したが、一次選考にもひっかからなかった。
その2ヶ月後、荒川市民マラソンを完走した。
復路では大会史上最悪といえる、猛烈な逆風が吹いたが、制限時間の7時間ぎりぎりで完走した。
完走と言っても走ったのは27kmまで。
それでも完走は完走。
心に広がる充実感はその後、1年間続いた。
「えっ、マラソンって あの40キロのやつ?」
「自分はぜったいムリ!」
マラソンを完走したと誰かに話せば、おおかたの人から尊敬の言葉を送られる。
日本国民の大半がマラソンに親しみと畏敬の念を抱いている。
ルート2がいくつかは忘れても、円周率の 3.14 とマラソンの 42.195kmは知っている。
読売新聞社の調査では、毎年好きな見るスポーツのベスト5にはいっている。
トライアスロンのレースに出たと言っても、頭に「?」マークが浮かぶ人が多いが、マラソンに出たといえば「えっ、あの42kmの?」という承認を伴うまなざしが返ってくる。
そして、他人からそうであるように、自分でも自分を尊敬できるようになる。
その苦しさを知っているのは自分であり、成し遂げたことの価値を一番わかっているのも自分だからだ。
自分に自信が持てない。
誰かに認めて欲しい。
共依存に悩んでいる。
うつ病が長い。
そういう人たちにマラソンは有効だ。
モノを買うと幸せを感じる。
だが、手にした途端に急速に冷めていく。
お菓子やアイスを食べれば幸せを感じる。
だが、食べているそばから、もうそれは薄れている。
それらの幸せは、いずれも一過性のもの。
他人からの承認は心の支えになる。
だが、いつか慣れてしまい、ありがたみを忘れてしまう。
そして、いつ相手から途絶えるかわからない。
マラソン完走の幸せは長続きする。
それは自分で自分を承認したからだ。
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