雨の夜の交通事故
ある冬の日
午後から降り出した雨は、夕方には雪混じりになり
18時を迎える東京の気温は5度まで冷え込んでいた。
忘年会の時間まであと5分
会場の店はもう目と鼻の先。なんとか間に合いそうだ。
傘を斜めにさして、降り込んでくる雨を防ぐ。
もう少しで歩行者信号が青に変わる。
その時だ。
片側三車線の右折レーンにいたタクシーが頭を左に振った。
客が急に行き先の変更を指示したのか。
それとも、歩道から誰かが手をあげたか。
タクシーはおっかなびっくり、真ん中の車線に頭を出したが、そこで止まった。
いや、止まっているように見えた。
そこに50ccのバイクがきた。
バイクはタクシーに気づかないのか、避けようともせず直進してくる。
そして、あっという間にタクシーの助手席ドアにつっこんだ。
転倒したバイクと運転者が僕の足下へ向けて滑ってくる。
そして1m手前で止まった。
忘年会シーズンの駅前交差点には30人ほどの人が信号が変わるのを待っていた。
信号が青に変わり、そのまま立ち去る者。のぞき込む者。
こういう時、スマートフォンは不便だ。
電話専用機ならば[1][1][0][通話ボタン]と押すだけだが、カバンから出したところで、暗唱解除して、液晶表示させて、電話モードに切り替え・・
とてもすぐにはかけられない。
「誰か救急車呼びました?」
あたりに問いかける。
じゃ、私が
OL風の女性が携帯のボタンを押し始めた。
タクシーの運転手が降りてきた。
バイクの運転手の意識はある。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫なわけないだろ!」
うずくまったまま声を荒げ、そのまま冷たい雨に濡れるアスファルトに伏している。
「あの、場所がわからないんですけど」
件のOLが助けを求める。
電話を替わり、救急センターへ現在地を伝える。
忘年会の会場地図に書いてあった番地をいうと、すぐ了解してもらえた。
さっきの女性に替わってください。
そう言われて、携帯の持ち主を捜すが、あたりにOLの姿は見あたらなくなっていた。
つづく
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