« ケニアから来た日本語を操る実力者 | トップページ | いなくなった携帯の持ち主 »

2009年1月 8日 (木)

雨の夜の交通事故

 ある冬の日
 午後から降り出した雨は、夕方には雪混じりになり
 18時を迎える東京の気温は5度まで冷え込んでいた。

 忘年会の時間まであと5分
 会場の店はもう目と鼻の先。なんとか間に合いそうだ。
 傘を斜めにさして、降り込んでくる雨を防ぐ。
 もう少しで歩行者信号が青に変わる。

 その時だ。
 片側三車線の右折レーンにいたタクシーが頭を左に振った。
 客が急に行き先の変更を指示したのか。
 それとも、歩道から誰かが手をあげたか。
 タクシーはおっかなびっくり、真ん中の車線に頭を出したが、そこで止まった。
 いや、止まっているように見えた。

 そこに50ccのバイクがきた。
 バイクはタクシーに気づかないのか、避けようともせず直進してくる。
 そして、あっという間にタクシーの助手席ドアにつっこんだ。

 転倒したバイクと運転者が僕の足下へ向けて滑ってくる。
 そして1m手前で止まった。

 忘年会シーズンの駅前交差点には30人ほどの人が信号が変わるのを待っていた。
 信号が青に変わり、そのまま立ち去る者。のぞき込む者。
 こういう時、スマートフォンは不便だ。
 電話専用機ならば[1][1][0][通話ボタン]と押すだけだが、カバンから出したところで、暗唱解除して、液晶表示させて、電話モードに切り替え・・
 とてもすぐにはかけられない。

 「誰か救急車呼びました?」
 あたりに問いかける。
 じゃ、私が
 OL風の女性が携帯のボタンを押し始めた。

 タクシーの運転手が降りてきた。
 バイクの運転手の意識はある。
 「大丈夫ですか?」
 「大丈夫なわけないだろ!」
 うずくまったまま声を荒げ、そのまま冷たい雨に濡れるアスファルトに伏している。

 「あの、場所がわからないんですけど」
 件のOLが助けを求める。
 電話を替わり、救急センターへ現在地を伝える。
 忘年会の会場地図に書いてあった番地をいうと、すぐ了解してもらえた。

 さっきの女性に替わってください。
 そう言われて、携帯の持ち主を捜すが、あたりにOLの姿は見あたらなくなっていた。

つづく

| |

« ケニアから来た日本語を操る実力者 | トップページ | いなくなった携帯の持ち主 »

一般/出来事」カテゴリの記事