2サイクルのバイクでツーリングして何が悪い
それにしても小黒川PAから諏訪湖SAまでは命からがらだった。
寒さに意識が薄れてくる。
何度も右車線のラインに寄ってしまい、その度に後続車からパッシングを受けた。
「もうちょっと火に当たっていけ」
トラックのおいちゃんに言われるまま、ストーブの前で固まっていると、ようやく体が生き返った。
大阪からの高速代6,700円を支払い、諏訪湖ICで降りる。
20号線を上り、下諏訪町のユースホステルを目指す。
19:40 ユースホステル到着
残してあった夕飯をいただき皿を洗うと、お約束のミーティング。
何度やっても慣れない。苦手だ。
だけど「平気だ」という顔をする。
ノリを求められれば、ノリ返す。
旅の恥はかきすて。
子どもの頃、母は僕にいいコトバを教えてくれた。
この日、他にライダー客はいない。
ミーティングが終わると話し相手もなく、早々に床に入る。
布団が暖かい。つい数時間前、雪の中、高速道路を走っていたのがウソのよう。まさに地獄から天国。
生きててよかった。そう思うが早いか、転がるように眠りにおちた。
翌日は一転して快晴。
窓の外に広がる景色を見下ろすと、日光を受けて銀色に光る巨大な円盤が横たわっている。
それが、前日の寒波で凍った諏訪湖だとわかるまでに 5秒かかった。
9:10 オーナーに見送られて、お世話になったユースを後にする。
高速に乗れば、東京までの残す距離は200km。
前日、神戸から一気に600km走ろうとしたのに比べれば、一日の行程には短すぎる。
東京には夕方までに着けばよい。
中央自動車道には乗らず、下道を行くことにした。
およそ215km 5時間半の道のり。
昨日の吹雪が嘘のような青い空、暖かい風、空いた道。
30kmほど走ると山梨県に入った。
ノンストップで100km走り、大月の手前で1度めの休憩。
12:45 神奈川
13:10 東京都にはいった。
諏訪湖から東京までの道では、一枚も写真を撮らなかった。
快晴のもと、山林を縫うように空いた道を走るRZ350。
それを空から見下ろした映像だけが記憶にある。
一枚の写真から呼び戻される記憶の容量は膨大なハードディスク。
一枚の写真もないのは、今思えば寂しい。
たくさんの写真は要らない。
ただ一枚、ここぞというところで撮っておけばよかった。
福岡→東京 走行距離 1,270km
バイク、クルマを通じて生涯で最も長いツーリングだった。
2サイクルのバイクでツーリングというと、すぐ燃費がどうだとか、2サイクルは走る=エンジンを回さなければだめだとステレオタイプに言う人がいる。
燃費は懐具合との相談であり、他人にとやかく言われるものではない。
ツーリングだからレッドゾーン近くまで回さないわけではない。2サイクルは四六時中、回して走らなければならないかのように言うのは、至極ナンセンス。
RZ350のような2サイクルのスポーツバイクでツーリングをすることが楽しい。
前傾姿勢で腕が疲れるとか、腰が痛くなるというのは、相対的な比較をした場合の話。
バイクは人の体で走っている。
どんな姿勢で乗っても、長く走れば疲れる。
このバイクが好きで、このバイクだから走りたい。
ツーリングのためにバイクを選ぶのではない。
バイクで走る舞台としてツーリングに出かけるのだ。
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