バイクと住むマンション
RZ350に乗っていた時は、装備といえば、手袋、ブーツ。
それにYAMAHAで買った、15,000円のジャケット。
全身シルバー、宇宙服のようなデザインに、青いラインが入っている。
バイクは転倒と隣り合わせの乗り物。
そこがクルマと違う。
手足がむき出しになっていると、怪我を負う確率が高くなる。
半袖、半ズボンで乗るなんて、もってのほか。
「バイクに半袖で乗るのは、素人のやることだ」
と、粋がっていたため、真夏でも長袖のジャケットは欠かさなかった。
毎日そればかり着ていたから、学食では「あいつ、いつも同じ格好してるけど、他に服ないのかよ」と言われていたかも知れない。
「moto、それば、5000円で俺に売れ」
毎日着ていたから、ぼろぼろになっていた銀ジャケ。
福岡を離れる時、喫茶店のマスターの申し出に、その場で脱いで渡した。
もちろん、5000円という大金も魅力だったが、ボクが大事にしていたジャケットを、記念によこせと言ってくれているようで、返事には迷わなかった。
今も時々、あのジャケットは、とっくに燃えないゴミの日に出したんだろうなと、思い出している。
こうして、皮膚が露出しないようにはしていたものの、貧乏学生に皮つなぎを買うお金はなかった。
ブルーノートの壁にかかっていたレザースーツは15万円。
安いものでも、10万円はくだらない。
だが、社会人ともなると、バイクで怪我をしたので、会社休みます。
というわけにもいかない。
新車FZR250Rを迎えるに当たり、皮つなぎ、ヘルメット、ブーツ、手袋を一斉に新調した。
ヘルメットは、現役最後の年、一生懸命応援したケニー・ロバーツのレプリカモデル。
社会人ならではの、大人買いである。
4年ぶりに乗るバイクは、極度に緊張した。
初めて経験する、クルマからバイクへの脳の切替は簡単ではなかった。
それは例えるならば、さっきまで応接間のソファーに座っていたのに、気づいたら、ジェットコースターの椅子に座っていたようなもの。
体がむき出しになると、戦闘的な気分になる。
これは、今思えば、マラソンでレースを走っている時に似ている。
こうして、フルカウリングのバイクに乗るという長年の夢は叶った。
だが、社会人になると、なかなか乗る機会がない。
バイクはいつも、駐車場の隅っこにぽつんとたたずんでいた。
雨風をしのぎ、盗難防止のためにカバーをかけており、その勇姿を見ることもない。
部屋に飾っておくことができたら、どれだけ、日々癒されただろう。
かつて、バイク乗りが憧れた小説「汚れた英雄」 の映画。
主人公を演じる草刈正雄の部屋。プールサイドに、GPマシンが置かれている。
ボタン1つで、衣装が回るクローゼットと共に、憧れの原風景だ。
ボタン1つで回る、電動ネクタイ掛けは通販で手に入れたが・・
ネットを検索すると、バイクガレージがついた賃貸マンションが東京にある。
バイク乗りには、たまらない発想である。
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