「分社」と「持ち株会社」
「持ち株会社」とは、経営を目的として、ある会社の株式を保有する会社のことである。
会社を事業ごとに分割、分割した各社の株式を「持ち株会社」が持ち、経営判断、一般管理部門を共有することを「分社」という。
1977年の法改正で「持ち株会社」が認められて以来、分社経営が行われるようになった。
独占禁止法による「持ち株会社」の定義は次の通り。
「取得株式総額が、総資産額の50%超を保有する会社」
分社のメリット
■一般管理部門が共有できる。
各部門にいた庶務、経理、総務、パソコン担当などの人員を持ち株会社に置き、各社で共有する。
会社経営という視点からみた、分社のメリット
■不採算部門をやめることが容易になる。
それぞれの会社が独立しているので、責任の所在が明確になる。
会社が一つのうちは、不採算部門は「赤字部門」と呼ばれる。
分社すると、これが「赤字会社」になる。
赤字が続けば、企業はその存在価値を失うので、その会社はつぶれることになる。
■社員の目が覚める。
「赤字部門」の社員の中には、赤字が続いているのに、なんの疑問も持たない社員が多い。
「自分のせいではない」「自分は希望してここにいるのではない」と、けつをまくっている社員は少なくない。
だが、分社して「赤字会社」になると、そんなことは言ってられなくなる。
黒字にしないと会社はつぶれる。それは、自らの雇用がなくなるということ。
そうならないよう「赤字部門」だった人たちは「赤字会社」になってはまずいので、必死になる。
こうして、ぬるま湯につかっていた社員の目が覚める。
これが、分社する最大のメリットである。
「持ち株会社」には2つの種類がある。
■純粋持株会社:他社の経営を本業とする。
■事業持株会社:本業がある。
持ち株会社は、○○ホールディングス という名前が多い。
金融持ち株会社は、○○フィナンシャルグループ という名前が多い。
「持株会社」ではなく「持ち株会社」と表記することが多い。
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2009年3月現在
分社は、経営者にとってはメリットが大きいが、従業員にとっては功罪相半ばである。
■黒字部門の会社は、投資の自由度が高まる。
赤字部門にお金を回さなくて済む。
■赤字部門の会社は、じり貧になり、解散の危険もある。
会社全体が不振を極めているから、分社化するのであって、その中での赤字部門は、大変に苦しい経営となる。
■ヨコのつながりはなくなる。
日本的な村社会、家族的な会社としての、つながりは薄れる。
特に20代の社員はドライで、一般管理を担う会社への冷たい態度が露骨になる。
ただし、持ち株会社に移行せざるを得ないような会社は、元々、ヨコの連携が薄いものであり、そういう観点では、あまり変化がないとも言える。
■労働組合は、会社との交渉戦術を見直す必要がある。
1997年の独禁法改正当時から数年の間に「持ち株会社」の制度を解説した本が多数出版された。
だが、その後の11年では、持ち株会社の内部から、その体験談を綴った本は見あたらない。
くだらない内部告発の本は要らないが、持ち株会社に移行する内情を切々と書いた本ならば、読んでみたい。
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