中華料理屋で女の子と相席になった
無性に炒飯が食べたかった。
商店街に確か、中華屋さんがあったはずだ。
店先のショウケースに蝋細工の見本が並んでいた。
食べ物屋はこうでなきゃと思うのだが、かと言って一度も入ったことがない。
ドアは磨りガラスになっていて、店内の様子はわからない。
炒飯を食べると決めて家を出た。
それなのに、100m手前で、やっぱりコンビニで弁当を買って帰ろうという(案)に、差し替えようとしている。
あった、あった。
店の位置を正確に把握しているわけではない。
あったと思っていた店が、つぶれて無くなっていたというのは、よくあることだ。
ショウケースで炒飯の存在を確認する。
小振りな炒飯 値段は650円。
今日の「炒飯を商店街で食べるぞ」プロジェクトの実施を、脳が指令する。
ドアはボタンを「押してください」と書いた自動ドアだった。
初めて見る店内。
なんと満席だ。
テーブルがこんなふうにぎっしり並んでいるとは思わなかった。
けっこう流行っている店なのか。
満席だから、ここは帰るしかない。弱気の自分が免罪符を発行しそうになる。
いや、何のためにここまで来たのか。
この機会を逃したら、あとあとまで引きずるかもしれないぞ。
いらっしゃい
心のディベートに3秒かかったため、店の人に見付かってしまった。
大将らしきおじいちゃんが、そちらへどうぞと目線を送る。
視線の先には、4人がけのテーブル。
こちら向きで20代とおぼしき女の子が一人。
その小さい体に似合わぬ大きな器のラーメンを傍らに雑誌を読んでいる。
炒飯ひとつ食べるのに、とても緊張していることを悟られぬよう、案内に素直に従う。
できるだけ目が合わぬよう、彼女の斜め向かいの椅子を引く。
すいません
彼女は会釈に応えたかどうかわからない。
できるだけ抽象的な存在でいようと決めた。
一度座ったあと、再び左に10度椅子を引き直す。
こぢんまりとした商店街
一人きりでやってきてラーメンをすする彼女。
美容院の店員といったところか。
炒飯ください
え゛っ?
ちょっと言うのが早かったのか。
まだ、大将は注文を聞く態勢にはいっていなかったようだ。
ちゃーはんください。
あー、はい 炒飯一丁!
一丁って、あなたが作るんじゃないのか。
奥からは時折、おばちゃんの声がする。
食べ物屋といえば、ガンコオヤジが厨房にいて、にこにこおばちゃんが配膳係と相場が決まっているが、この店は逆なのか。
あるいは、ガンコオヤジ夫妻が調理して、引退した先代が配膳を引き受けたのか。
文庫本を取り出す。
炒飯を待つ間を持たそうと思い、本棚から一冊抜いてきた。
ずっ、ずっ、ずっ
小刻みにラーメンがすすられていく。
最近の若者は、このリズムでラーメンをすすることが条例で定められているのか。
ラーメンは、音を立てて食べると美味い。
でも、長くすすれば、汁は飛ぶし、一度にほおばれない。
変におしとやかでなく、かつ、機能的。
彼女が美容師ならば、きっと、気の利いたカットをするだろう。
びむ~っ
美容師がいきなり、鼻をかんだ。
4月21日につづく
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