(謎)の銀座での失速
東京マラソンを走りながら書いた 【 8 】
予定していた20kmの通過タイムから、およそ2分遅れている。
どこで遅れたのか、見当がつかない。
今日、二度目の日比谷公園を過ぎるとコースは右折して、そこは21km地点。
ここからは、いよいよ銀座をめざす。
日比谷~品川~日比谷の折り返しは、なんとなくもの悲しい空気が流れていただけに、迫り来る繁華街 銀座に心が躍る。
ペニンシュラホテルを左にみて、正面には新幹線のガードが見える。
そこに、右手から矢印のように鋭利な姿が現れた。
おぉ、500系だ!
500系とは、JR西日本が開発した流線型の造形が美しい新幹線車両。
税法上、試作車扱いにするため、16両×9編成しか作られていない。
1997年3月にデビューして以来、その9編成すべてが東京-博多間の「のぞみ」に使われてきた。
東海道では異彩を放つグレーのボディ。
まるで、戦闘機が線路を走っているような、異様な形状。
鉄ちゃん、鉄子、その子供に 絶大な支持を受けている車両だ。
だが2007年7月、さらに速い N700系車両が登場して以来、窓際においやられ、現在「のぞみ」運用は一日2本。
500系と遭遇することは、大変にレアなのである。
東京駅が近いため、徐行する500系。
時速 8kmで走る僕。
しばらくは、その美しいフォルムを見上げながら走る。
よっぽど、カメラを取り出そうかと思ったが、その気力はなぜか沸いてこない。
銀座インズの上に作られた無料の高速道路「東京高速道路」をくぐると、一気に人が増えた。
歩道には鈴なりの人。心なしか、女性が多い。
和光、三越がある銀座四丁目の交差点を左折。
ここは、写真を撮ろうと思っていたポイントだったが、どうにもカメラを出す気力がない。
ウォークマンからは、銀座で聴こうと入れてきた遊佐未森「地図をください」が、予定通りに聞こえている。
何もかも、予定通りのはずなのに、何かが狂い始めている。
ただ、その正体に、気づかない。
一度、経験を積んだ今ならば、どう対処すればよいかが想像できる。
だが、経験のないことは、想像ができなかった。
巨人が日本一になるとパレードをする銀座中央通り。
その1km強の直線が、全然、楽しめなかった。
確か、銀座を過ぎれば日本橋、そこでは佐野元春「約束の橋」を聴くはずなのだが、なかなかピアノの前奏がかからない。順番を入れ間違えたのだろうか。
21kmから24kmまで、急激にペースが落ちた。
それまで刻んできたラップよりも、1分以上遅い。
訳のわからぬまま、レースは続いていく。
日本橋を右折すると、茅場町で左折、そしてまた浜町中の橋の信号を左折。
頭の中に入っていた日本橋から雷門までの道のりは、ほぼ直線だった。
いったい、今どこを走っているのか、頭が混乱する。
雷門はどこだ。
雷門が待ち遠しい。
雷門に行けば、何かが変わる、自分の位置を取り戻せる。
その一心で走り続ける。
24→25km区間で7分台があった以外は、軒並み8分台の後半。
計画では、35km過ぎて、失速した自分に許していたペース。
14kmも早く、失速が訪れてしまった。
次回は4月4日
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