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2009年5月15日 (金)

野球は追っかけ再生で30分で追いつく

2006年4月27日、初めて巨人戦が地上波で放送されなかった。
まだ3年前のことなのだが、もうずいぶん昔のことのような気がする。

2006年シーズンはその後、巨人の低迷と共に放送のない日が増え、優勝の望みが消えた9月には、放送がないことが当然となった。
プロ野球が始まって以来 70余年、地上波で誰もが見ることができた巨人戦は、2006年をもって、有料(CS放送G+)で見る番組へと移行したのだった。

2007年
原監督が復帰して2年めのシーズン。
かつて、ニッテレはビジターゲームでも、放送権を買って放送していたが、そういうことはなくなった。
そして、ホームゲームも、他局へ売却することが多くなる。
巨人は2年つづけて4月は首位と好調な滑り出し。
松井が去って以来、裏切られつづけて、はや4シーズンが過ぎた。
それでも、今年こそは・・・と期待してしまうのが、ファン心理。
しかし、テレビの前に座れども、そこに巨人が映らない日が多かった。

2008年
ニッテレ地上波は、ホームゲームさえ放送しなくなった。
巨人戦をすべて見るためには、BS環境を整え、それとは別に CSの G+、フジテレビ739に入る必要があった。

2009年
ホームゲームは、CS放送G+が試合開始から終了まで放送。BS日テレが52試合を放送。
BS、CSの視聴者を獲得するためか、主催試合を地上波他局へ売却することはなくなった。

 野球中継を取り巻く環境が、2006年からの3年で劇的に変わったことが、おわかりいただけたと思う。
 そして、環境の変化はメディア側だけでなく、視聴者の側にも起きた。
 それは、ハードディスクレコーダーの普及による「追っかけ再生」の登場である。

 シーケンシャルな録画装置であるビデオテープでは、録画しながら、巻き戻して再生することはできない。録画して見るには、放送が終了する時間まで、待つ必要があった。
 スポーツは生きている。その「同時間性」が命だ。生で見るのがスポーツの醍醐味であって、録画なんてもってのほか。同時間帯にドラマやバラエティがかぶっていたら、そちらを録画して後で見る。ビデオテープの時代には、スポーツをビデオで見るという発想があり得なかった。
 一方、ランダムアクセスのハードディスクでは、録画しながらでも、録画済みの部分から見始めることができる。
 18時から録画をしておいて、20時に帰宅する。
 録画は続けながら、18時の時点から見始める。
 タイムシフトである。
 自分が、2時間前に戻ることで、同時間性を感じることができるのだ。

 タイムシフトでは、時間を飛び越えることもできる。
 チェンジの攻守交代は飛ばす。
 投手交替の幕間も飛ばす。
 捕手がマウンドに行ったら飛ばす。
 初めはそんなものだが、次第にエスカレートしていく。
 贔屓チームの守備も飛ばす。点を取られるところなんて、見ても全然楽しくない。
 かつての江川のような投手でもいれば、守備もまた見応えがあるのだろうが、現代にはそういう投手がいない。
 贔屓チームの攻撃くらいはゆっくり見るかと言うと、それも黙って見ていられなくなる。
 ファウルを打つと「30秒スキップボタン」で飛ばす。
 ランナーが出た時は、捕手のミットにボールが収まると、飛ばす。
 2009年から「20秒ルール」が始まったため、無走者の時は、30秒スキップボタンだと、1球分行き過ぎてしまう ・・・
 結局、2時間のゲームを 30分程度で追いついてしまう。

 野球中継を取り巻く環境は、大きく変わった。
 だが、この数十年、変わらないものがある。
 それが、野球報道に関わるメディアの「プロ野球独特用語」である。

つづく

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