五島のいじめ
山口ではいじめっ子だった僕にとって、五島の暮らしは楽ではなかった。
僕はいじめっ子と言っても、ただ一人で女の子にいたずらを仕掛ける。
まさか、これくらいでと思うようなことで、女の子は泣く。
それを、取り巻きが職員室に通報する。
放課後の「反省会」で僕が糾弾される。
「もう、しません」
僕がそう言って、一日が終わる。
その繰り返し。
それでも、フシギと女の子から避けられたという記憶はない。
ところが、五島の子供達は気性が荒い。
山口の盆地でほたるを眺めて育った子どもと、父親がイルカに銛を突き立てるのを眺めて育った子どもの間には、大きな差があった。
些細なことですぐ、諍いが起きる。
冗談が通じない。
しかも、徒党を組む。
いじめ方が陰湿なのは都会っ子と相場が決まっていたが、五島の子どもも負けてはいない。
その日は僕がいじめられる番だった。
校門を出て家路につくと、後ろから五人組が着いてきた。
「足んみっちょか~」=足が短い
「ペーロンにのらんでずるかー」=説明割愛
「かっこばっかつくんな」
代わる代わるの罵詈雑言が背中を刺す。
いったい、どういう順番で、台詞はどのように決まっているのか、聞いてみたい気がしたが、バカは相手にしないという主義なので、先を急いだ。
僕の家は学校から2番目に遠かった。
榎津で3人が隊列を離れ、後を託された2人が、引き続き、僕をなじり続ける。
しかも、その2人は下級生のハラとユカワだ。
2人はさすがに上級生相手では、気が引けたのか
「ば~か」と言いながら、走って僕を追い越していった。
僕はノーコンだった。
キャッチボールは相手の胸を目がけて投げろ!
そう何度言われても、ボールはとんでもないところへいく。
狙った的には当たらないという、絶対の自信があったので、咄嗟に足下にあった石を拾って、2人を目がけて投げた。
浦桑へ向かう長い下り坂
石は糸を引くように水平に飛び、道が下っている分、ハラの後頭部のど真ん中を捕らえた。
石が手を離れて、ハラを捕らえるまでわずか1秒。
1秒といえば、セシウム133原子の基底状態の二つの超微細エネルギー準位の間の遷移に対応する放射の91億9263万1770周期の継続時間である。
いや、ちょっと言いたかっただけだが・・
ハラがその場に倒れて動かなくなった。
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