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2009年7月24日 (金)

ずっぴ争いを制したのは浦桑

 ソフトボール大会が始まった。
 優勝候補は丸尾。対抗が似首。榎津そして我らが浦桑は、最下位争い。誰もがそう見ていた。
 抽選で決まった1回戦の組み合わせは
 丸尾ー似首
 榎津ー浦桑
 なにせ、当時は「シード」などという上等な考え方がない。
 いきなり1回戦で優勝候補同士が当たってしまった。

 第1試合の丸尾ー似首は激戦の末、丸尾が勝ち決勝に駒を進めた。
 つづく第二試合、ずっぴ*1 争いの榎津-浦桑は1点のビハインドで、最終回5回裏、浦桑の攻撃を迎えた。1点差といえども我ら浦桑の貧打は致命的で、5番の僕から始まり下位打線に回る攻撃では敗色が濃厚だった。

 僕は球技になると、つい本気を出してしまう。
 というより、本気を出しすぎてしまう。
 「へいへい、ピッチャーはいらんで」
 一球ごとに相手を野次る。
 「しまってこー」 「ないすせん」
 味方には大声で声をかける。
 打席に入れば、バントの構えで投手を揺さぶる。
 「しょんなかねぇ。ストライク入れろさ」 そんな顔をして。
 そして、ほんとにセーフティバントもする。
 塁に出れば必ず3塁まで盗塁する。
 テレビで見たことがあるプロの行いは、すべてやらないと気が済まない。

 僕のバントの構えに制球を乱した相手投手は、最終回という緊張も手伝い、いきなりの3連続四球。
 無死満塁となった。
 ここで、元社会人ソフト選手のヒラタが取る作戦は、100人中100人に見え見えの2連続スクイズである。

 8番打者への第一球、サインはスクイズ。好スタートを切った僕は難なくホームインして、まず同点。
 つづく、9番打者のところで、代走に足の速いアイツが起用された。
 つづくサインは、またも初球スクイズ。

 3塁ランナーのアイツがスタートを切った。
 僕らはボールを追っていたが、後で写真を見ると、投手が投げる前に3塁のアイツは、もうスタートしていた。
 ソフトボールでは、これは「離塁アウト」といって、ランナーアウトである。
 だが、五島には離塁アウトというコトバはまだ輸入されていなかったらしい。
 3塁塁審の役場のナカグチさんのお咎めなし。
 慌てた一塁手がバント処理をお手玉。ボールはホームに返ってこなかった。口をあんぐり開けて立ちつくす捕手のヨコを、アイツが滑ることもなく、ホームを駆け抜け浦桑がサヨナラ勝ち。決勝に進んだ。

 絵に描いたような劇的な勝利。
 ゲームセットの整列が終わると、僕らは手を取り合って喜んだ。3位決定戦の間の昼食タイム。両親と弁当を囲みながら、試合を何度も振り返り、勝利の余韻に浸った。
 だが、その喜びは決勝が始まるや、恐怖に変わる。

 まともに守れる選手が他にいないため、僕は左利きなのにショートを守っていた。
 そのショートから真正面に丸尾の応援席が見える。
 3位決定戦、似首に大差で敗れた榎津の面々が、丸尾の応援席に陣取っていた。

 キダはいつも、陰湿ないじめの中心にいる男だ。
 日頃は人がよさそうにニコニコ笑っているのだが、一旦いじめモードに入ると、かなりえげつないことを平気でやる。
 そのキダが番長格のフジタの横に陣取り、こちらを指さしながら、なにやらご注進に及んでいる。

 オレは調子に乗りすぎた・・
 丸尾ベンチを包む不穏なムードでわかる。榎津敗戦の因をつくった張本人として、怒りが僕に集約されていることは明らかだった。
 もうそうなると、試合どころではない。
 もしこれで、丸尾を破って優勝しようものならば、どんな作戦が決行されるか、考えただけで怖い。
 僕はひたすら地味なプレーに徹し、存在を消そうと必死になった。
 試合が9-7で丸尾の勝利に終わった時、心からほっとした。
 そして、嵐は次の朝やってきた。

つづく

*1 ずっぴ=どべ=最下位

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