« 魚目小学校 | トップページ | 秋の名古屋をみといてちょーよ »

2009年7月15日 (水)

自転車運転免許試験会場にて

 「うんが昨日、自転車に乗っ取るとば、見たとぞ」

"うん"は五島弁で「おまえ」である。
 どうやら、自転車で公道を走ったことが、いけなかったらしい。
 その叱責の言葉は容赦が無く、黙っていたら軍法会議にでもかけられそうな勢いだ。

 魚目小学校の規則では、公道を自転車で走るには、免許証が必要なのである。
 転校してきたばかりなんだから、もうちょっと優しく言ってくれてもよさそうなものだが、なにせ、田舎だから事件がない。
 彼らだって生活に変化が欲しい。
 そこに、やってきた転校生が、校則破りの無免許運転とくれば、彼らが興奮して気色ばむのもわからないでもなかった。

 しばらく、自転車に乗れない日々を過ごした後、自転車免許試験の日がやってきた。
 放課後に受験者が、各々の自転車を持って校庭に集まる。
 今になって思えば、免許を持っていない校友のほとんどが、自転車持参だったのが変だ。

 試験管は学校の先生たち。お巡りさんが来るわけでもない。
 1年生から6年生までが、まったく同じ試験を受ける。
 ほとんどの生徒は、低学年の時に免許を取得済みで、同級の5年生は数えるほどだった。
 試験は実技4種目。筆記試験はない。

 最初の種目は、一本橋。
 一本橋といっても、石灰で 50cmほどの幅に引かれた2本の線。距離はおよそ10m。
 それをはみ出さないように、走り抜ける。
 自転車運転歴3年の僕に、これは朝飯前。
 試験管の採点は、1種目20点満点。
 手渡された採点表には「20」の数字が書き込まれた。

 続いてはクランク。
 これも問題なく、20点を獲得。

 3種目めは、8の字スラローム。
 8の字をなぞるように、1周するだけのことで、これもわけなく終わろうとしていたその時だ。

 4年生の女の子 二人がコースを横切った。
 彼女たちは、試験なんてお構いなし。放課後の校庭を駆けて遊んでいたのだった。

 慌てて急ブレーキをかけて停車。
 女の子は、あっと一瞬ひるんだものの、すぐに黙って、駆けていった。
 ここまでパーフェクトだったのに・・
 人生はなにが起こるかわからない。それも仕方がないことだと、最後まで試技を終えて、採点表を受け取る。
 すると、そこに記載された点数は「20」
 「とっさの判断、止まり方がよかった」と、試験管に褒められた。

 止まり方がよかった・・って、ふつー止まるだろ
 と心の中でツッコンだが、いやぁ感激です、神様は見ているんですねという純真な笑顔をつくった。

 最後の種目、横断歩道のある交差点の試技も難なく20点。
 なにせ、信号機がない町なので、海に落ちさえしなければいいのである。

 翌朝、試験結果が職員室の前の廊下に貼り出された。
 6年生の女の子が一番右に書いてあり、僕はそのとなり。
 80点満点をマークしたのは、二人だった。


 自転車免許証は厚紙に輪転機で刷ったもの。それを、プラスチックのパスケースに入れてくれた。
 それを、こんなふうにして、webで発信できる時代がくるとは思わなかった。

 生まれて初めての免許証を掲げてにっこりのmoto少年
 そんな写真の1枚でも撮っておけばよかった。


上五島ブログもくじ

コメントについて~非公開希望の場合、その旨をお書きください。

| |

« 魚目小学校 | トップページ | 秋の名古屋をみといてちょーよ »

旅行・地域」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 魚目小学校 | トップページ | 秋の名古屋をみといてちょーよ »