情報の有無が分けた1時間待ち
ひろめ市場には、高知の美味いものが揃う。 あいにくの雨だが、よさこい初日ということもあってか、11時で駐車場はほぼ満車。
浸水しないよう土嚢が積んであるエレベーターに乗って1階ののれん(ビニル製)をくぐると、そこは南国だった(アタリマエカ)
まずは市場をぐるりと一周して、システムを把握する。
その真ん中にはたくさんのテーブルが並び、さながらジャスコのフードコートである。
周りに並んでいるお店から、思い思いに好きな食べ物・飲み物を調達して、そこで食べるようだ。
塩タタキひとつだけでもいいですか?
旅前日の心配は杞憂だった。
さっそく、本題の「塩たたき」の探索に入る。ネットで問い合わせて教えてもらったお店は「明神丸」(みょうじんまる)と「やいろ亭」
どちらも注文を受けてから藁で鰹を焼きあげるので人気が高いとのこと。
「明神丸」の営業時間は午後9時まで、「やいろ亭」も遅い時間だと、鰹がなくなってしまうことがある。と親切に教えてもらっていたが、前日は東京から高知まで19時間かかってしまい、翌朝の仕切り直しで来ている。
「明神丸」はすぐにわかった。そこだけ行列ができている。店構えはいかにも儲かってますという高級感が漂い、異彩を放っている。
注文してから焼くということは、その行列からして1時間待ちはかたい。
カツオのたたきをそんなに待ってはいられないので、もう1軒の候補「やいろ亭」を探す。
こちらはなかなか見付からなかった。
人が一人も並んでいない。
店構えは間口が狭く、庶民的で市場の空気になじんでいる。
おぉこれならば待たずに食べられる。
「明神丸」といったいどれだけ味の差があるかは知らないが、情報の有無がこの1時間、待つか・待たないかを分けた。
しらべない旅もいいが、しらべる旅もやはりいい。
塩タタキひとつでいいですか?
それがどうしたの?という目でみて「1200円」とおばちゃんが答える。
確かコンビニでもらったおつりで100円玉が2つあった。
千円札を先に渡して、小銭入れから200円を出そうとした時だ。
おばちゃんが「はい200円」と言って僕にお金を渡した。
???
一瞬混乱した。
確か1200円と言ったはずだが、800円の聞き間違いだったか。
いや、そんなはずはない。お品書きには確かに「塩タタキ1200円」とある。
50円のペプシコーラに、安か~と言って喜んでいた高校の頃ならまだしも、今ここで塩タタキを作ってくれているお店から、トクしたらかんわ。
あの、僕まだ1000円しか出していないから、これちがいますよ
そう言って400円を渡すと、おばちゃんはちょっと戸惑い、無表情でお金を受け取った。
「席どこ?」
と聞かれたが、まだ決めてないですと答える。
ここは、席を先に決めるというシステムだったのだろうか。
何分そこで塩タタキを待っていたかわからないが、それはあっという間だったように思う。
塩タタキ一皿を大切に抱え、次は席を探す。
すぐそばにおばちゃん一人が食べている二人がけの席があった。
こんな時はプライバシーなんて言ってられない。
ここ、いいですか?
すると、いやぁここくるのようと着席を拒否された。
そこから、テーブル席をぐるりと一周する。
満席ではない。
空いているのかと思い近づくと、誰もが荷物を隣りに座らせている。
きっと、ご先祖様から荷物を大切にしなさい。いつも肌身離さず、食事の時は荷物様のために席を1つあてがいなさい。と言われた人ばかりなのだろう。
と、ちょっとシニカルにツッコミながら、歩いていくと本当に1周して「やいろ亭」の前に戻ってきてしまった。
すると、さっきのおばちゃんが「そこに座って」と指さしてくれた。
そこは、となりの店の一角。言われなければ進入するのがはばかられる地域。隣近所、もちつもたれつ、仲良くやっているのがうかがえる。
先客はオトナ2人こども3人、大阪から来た(推定)団体。角っこが1つぽつんと空いていた。
大阪の人は荷物はテーブルに置く習慣のようだ。
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