あんかけスパの見解
「moto お昼、スパゲッティいかない?」
名古屋に転勤した初日
同僚のサトウさんが誘ってくれた。
お昼になると混むからということで、11:45には会社を出る。
営業はこういう自由が効くところがいい。
1時間以内に仕事に戻れば、それは会社規定どおり。
僕はそれをタイムシフトと呼んでいた。
スパゲッティ屋は会社から徒歩1分の場所にあった。
15分前に来たというのに既に店はいっぱい。
5人が店の外に並んでいた。
9月にはいったばかりで、ただでさえ暑いナゴヤの屋外は暑く、その時点で少し気分が滅入った。
スパゲッティといえばカルボナーラ。
どこのスパゲッティ屋に入っても、初回は必ずそれを頼む。
別にコックの腕を試しているのではなく、ただそれが好きだからだ。
メニューにあったカルボナーラを注文して、オープンキッチンを見やると不思議、いや異様な光景が目に入った。
麺を揚げている・・・
スパゲッティは麺を茹でて、具を絡める。
男子厨房に入らないと言っても、それくらいはわかる。
しかし、茹で上がった麺が、引き続き油を張った鍋をくぐっているのだ。
まさか、あれが僕にくるなんてことはないだろうな。
だって、僕がたのんだのはカルボナーラ・・・
はい、おまち
はい、お待ちじゃないって。おい
敬語を使え
だいたい、客商売なのに客に敬語を使わない店主というのは、神経がおかしい。
今でも「はい、そこ何人いるの?2人?こっちいいよ」
などと客をアゴで使っている店主がいる。
さて、ここでは敬語の問題ではなく、それはないだろう
カルボナーラだ。
油でくぐらせた麺に 玉子と野菜を炒めて混ぜて、はいお待ち
カルボナーラ
なわけがないだろ。
ここは異国か?
結局、その店にはナゴヤにいる間の8年間、二度目はなかったが、お昼時に店の前を通りかかると、いつも行列ができていた。
僕は今でも、ナゴヤ人の味覚はどこか破綻していると推察している。
あとで、そのお店が出しているのが「あんかけスパ」という食べ物だと知った。
名古屋市のスパゲッティ・チェーン「ヨコイ」のスパゲッティが始めたらしい。
一度、ヨコイに食べに行った。
実際にそういう名前のメニューはなく、ふつうのスパゲッティの名前だった。
ゆでた麺を油に通しハヤシライスのルーを薄めたような「あん」をかけるのでかなり高カロリー。
ナゴヤ人はあんかけスパとみそかつを食べるので、太った人が多い。
自分もナゴヤに住んだ初めの三ヶ月、みそかつばかり食べていたら3kg太った。
2000年には、テレビ番組「雷波少年」の熱狂的巨人ファンVS中日ファンで「あんこ」を乗せたのがあんかけスパだとやっていたが、そうではない。
あんこを乗せるのは、また別の店の専売特許だ。
あんかけスパは、カルボナーラやポモドォーロと言った「パスタ」とは別世界の食べ物。
2000年代にはいり「ナゴヤグルメ」の人気が出て、一躍知名度が上がった。
2003年3月には、カレーハウスCoCo壱番屋が「あんかけスパゲッティ専門店パスタ・デ・ココ」をオープン、以後チェーン展開を開始。
ついに「あんかけスパ」を固有名詞として認知してしまった。
だが、これだけはナゴヤに行ったからと言って、わざわざ探して食べるほどのものではない。
こう書くと、あんかけスパで生計を立てているお店の方は、悲しく思われるかも知れない。
ただ、これは一つの見解であり、実際にお店が続いているという事実が、その味を求めている人が多いという証なのである。
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