オビスポとイチローとサラリーマン
ウィルフィン・オビスポ Wilfin Obispo
はMLBマイナーから巨人に移籍した投手
1984年9月26日、ドミニカ共和国生まれ
ヒーローインタビューは、母国語スペイン語で答えている。
2004年、MLBマイナー在籍時に遊撃手から投手に転向したので、投手歴はまだ5年。
2007年3月13日、巨人の春期キャンプでテスト合格し育成選手として契約。
同年6月27日、支配下選手登録 背番号91
同年8月13日、出場選手(一軍)登録されて、2試合に登板
しかし、故障のためオフには再び育成選手契約となった。
このシーズンまで、オビスポは「巨人一の速球投手」
久しく150kmを投げる投手がいなかった巨人のファンは、オビスポの故障に落胆した。
オビスポ故障と時を同じくして、横浜からクルーンが入団。
”巨人一”の看板もなくなり、このまま忘れ去られるかに思われた。
ところが、故障が癒えると翌2008年シーズンは、21セーブでイースタン・リーグのセーブ王となる。
そして2009年シーズン、7月2日に初先発初勝利。
7月22日、初完投勝利。
9月23日、優勝を決めた試合に先発して5勝(1敗)めを挙げた。
かつての巨人を評して、落合監督は「4番ばかり獲ってきてもちっとも怖くない」と言い、事実巨人は松井に逃げられた2003年から長く低迷した。
WBCには選手派遣なし、オールスターゲームでは原監督推薦の和田・岩瀬出場を拒否した中日。
それでも巨人が中日をおさえた要因はスカウティングにある。
山口、松本、オビスポは育成選手上がり。
坂本は巨人、中日が競合指名でクジを引き、中日が獲得した堂上のハズレ1位である。
9月中旬から戦力になりつつある中井はドラフト3位だ。
ヤクルトから獲得したゴンザレスは、4月いっぱいまで2軍にいた。
プロ野球選手にはチャンスが必要だ。
そのチャンスを与えるか否か、殺生与奪権は監督が握っている。
もしも松井やイチローを超える選手がいたとしても、監督が起用しなければ、クビになるしかない。
先日亡くなった土井正三氏のことを「オリックス監督当時、イチローを使わなかった監督」として認識している人がいる。事実はその通りだ。1~2年めからイチローを一軍で使っていれば、さらにヒットを打ったかも知れない。
土井氏の生前の話に「川上さんが高田さんに厳しく接したことに重ねた。素質が大きいからこそ厳しく育てた」というものがある。その言葉に嘘はないだろう。
巨人は明らかに活性化した。
育成、2軍にいる選手にもチャンスがある。
現場で見ている中間管理職が、上級管理職へしっかりと情報を伝えてくれる。
上級管理職は、中間管理職の意見を聞き入れ、チャンスをくれる。
努力していれば、報われる日がくる。
選手たちは、そう信じることができたのだ。
それは、サラリーマン社会ではあり得ない話だ。
「誰かがきっと見てるよ」
「見ている人は見てるよ」
それは、本人のこころの中にある見解であり、他人が言うことではない。
目の前にいる中間管理職が、自分をよく見ている。
自分に登用について、上級管理職へ進言してくれる。
そう思うことができる、幸せなサラリーマンは1割にも満たないだろう。
ただ、プロ野球と違うのは、サラリーマンの殺生与奪権は管理職が握っていないということだ。
チャンスは「採用」の時点で、全員に与えられている。
努力している人、能力が長けている人に対して、管理職が「きみ、クビ」と宣告することは、法律が許していない。
やるもやらないも、自分が決めることができる。
誰が見ていようが、見ていまいが、やることをやる人はやるし、やらない人はやらない。
サラリーマンは恵まれている。
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