憧れの軍艦島を前にして
軍艦島記念グッズは未整備だったが、売店の弁当は充実していた。
低価格でしっかりおかずが入っており、多すぎず朝ご飯には好適な量。
どうすれば売れるかという研究の後がうかがえた。
軍艦島クルーズ マルベージャ号は、晴天の長崎港を 定刻 9:30に出港。
軍艦島をナマで見ようと、ほとんどの人が甲板に出たらしく、船室は空いている。
しばらくは船内のガイド放送を聞きながら、船窓の風景に見入る。
船に乗るとすぐ寝るという習慣の人がいる。
たて揺れに弱い人の船酔い防止策である。
寝てしまえば、よほどの揺れでもない限り起きることはなく、酔わない。
まさか、この短時間の遊覧船にそんな人はいないと思ったが、あちらこちらで早くも船をこぎ始めている。
長崎港にはイージス艦が停泊していた。
と言っても、周囲の運搬船に比べるととても小さな船で、船内放送で言われて初めてわかった。
「散骨・海洋投棄は禁止されています」「三菱造船長崎工場は150年の歴史があります」
観光ガイドは録音テープではなく、船員によるライブ放送。
遊覧船で、ここまで詳しいガイドは聞いたことがない。
"観光立県" 長崎の面目躍如である。
夢大橋をくぐって、長崎港から外海に出ると、船は少し揺れ始めた。
風力発電の風車、建設中の橋、沖をいく船
手当たり次第にピントを合わせては、来るべきシャッターチャンスに備えて、練習する。
一眼レフを買って8か月、望遠レンズを初めて使う。
長崎港を出港しておよそ45分
遠くに憧れの軍艦島が見えてきた。
さっきまで、あれほど晴れていた空は日がかげり、ファインダーから覗く景色が暗くなった。
そして、さっきまでの穏やかな挙動とは一転、船は上下にも揺れ始めた。
前方に軍艦島が見えてきましたと言われるまでもなく、人びとは反応する。
さっきまで船をこいでいた人は・・・まだ寝ている。
さらに島が近づくと、窓から軍艦島が消えた。
軍艦島が沈んだ・・
わけはなく、船は軍艦島に近づくと右に舵を切り、時計とは反対、左回りで島を舐めるようだ。
左側の席へ移動して、他人の肩越しにシャッターを切る。
一つの窓を譲り合い、一枚撮ったら、また次の人に替わる。
皆、軍艦島を夢見ていた同士。今日、上陸は叶わなかったが、いつかきっと上陸したい。ここには、そんな連帯感がある
・・ というのは、後からの作り話で、現場はそんなに悠長な状況ではなくなっている。
海のうねりは一段と高く、足を踏ん張っていないと、普通に立っていられない。
軍艦島海域に着いて15分。
船は軍艦島に沿って緩やかに左旋回。
島の裏側に回った。
この時点では、船室から窓越しに撮っているので、画像がぼやけている。
軍艦島が無人島になってから35年。
今からおよそ100年前の1916年に建てられた日本初の鉄筋高層アパートは、今にも崩れそう。
長崎に大地震が来ないことを祈る。
長崎県は1億5,000万円をかけて、観光用の基盤を整備したというが、その多くは観光客の安全確保のために使われたのだろう。
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