粋ではない I/F
ある日、あなたにメールが届く。
「注文が先方にIFされていません」
受発注業務に従事している人、コンピューター・システムの開発と運用に従事している人ならば、その言わんとしていることはわかるだろう。
だが、一般の人にはなんだかよくわからない。
こうして気軽に「IFされていません」「I/Fがうまくいきません」という人に、I/Fってなんですか?と尋ねると、たいていの人は答えられない。
インターフェース 【 interface 】 には大きく分けて、2つの意味がある。
1,ハードウェアやソフトウェアを相互に接続するための装置・規約・プログラム。
2,複数のシステムでデータをやりとりする部分の仕組み全般。
インターフェースの言葉の意味は「境界」
この言葉を日本で最初に取り上げたのは日立。
企業イメージ広告で、日立がめざす方向性を「インターフェース」という言葉で表した。
I/Fは「IT技術者がよく使う専門用語ランキング」がもしあれば、トップ3に入るコトバ。
ただし口述で「あいえふ」「あいすらっしゅえふ」と言われることはなく、口に出して伝える時は「インタフェース」と言われる。
IT技術者はこのように話す
「インターフェースはどうします?」
この時、この短い言葉の中には、次の意味が含まれている。
ホストコンピューターとクライアントサーバーでデータをやりとりするわけだけど、データのファイルレイアウト、個々のデータ項目の定義、個々のコード定義、データをどういう頻度、タイミングで受け渡すか、受渡し後の処理はどうするか、エラー発生時のロジックはどうするか、エラー発生時の運用はどうするか、それぞれのシステム担当者の役割分担・・はどうしようか
なんと便利なコトバだ。インターフェース
しかもメールで書く時はI/F。
170文字の意味が、わずか 3文字で済む。
ユーザーがコンピューターを使う時の入口になるマウスやキーボードのことを、ユーザーインターフェースあるいは、マンマシンインターフェースと言う。
データ入力画面のことを、インターフェースと言う人も多い。
内閣告示で長音は省略できないのだが、 大半の人が長音を書かずインタフェースと書く。
I/Fと言えば「データのやりとり」を指すことは、2009年の日本では共通理解されている。
ただし、IT技術者ではない一般ユーザーがI/Fと書くのはやめた方がいい。
自分の領域における専門用語を、立場がちがう人に言ってはいけない。
IT技術者はユーザーに対して「I/Fがうまくいっていません」と書いてはいけない。
「データが正常に送信されていないようです」と書くのが正しい。
時として、横文字専門用語は事実を曖昧にし、責任を曖昧にする。
ユーザーは、職人である技術者の真似をして「I/Fがうまくいっていないのでは」と言ってはいけない。
そういうことを日本では「知ったかぶり」と言う。
職人には職人のコトバがあり、それを素人が使うのは粋ではないのである。
粋ではない会話の例
◆寿司屋のカウンターにて
客 「大将 あがりちょうだい」
大将「はい お茶 一丁」
客 「大将 おあいそ」
大将「はい お勘定して」
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