マスクマンであふれる町
「インフルエンザが大流行」
メディア各社年末の「2009年10大ニュース」が言う。
WHOがH1N1のパンデミックを宣言したのが 6月11日。
もう半年が過ぎた。
喉元過ぎれば熱さを忘れるので、東京はマスクをつけた人が減っている。
ところが、この国だけはいつもマスクマンであふれている。
メキシコでは、20歳になると「マスク役(えき)」が課されるからだ。
満20歳になった誕生日から21歳になる前日までの1年間。
公衆の面前に出る時は、男女ともにマスクをかぶらなければならない。
往来をマスクをつけて歩いているのは、二十歳の男女ということになる。
プロレスが観光資源であり、外貨を稼ぐ産業であることから、国をあげてマスクをつけることになった。
皆が同じマスクをかぶると防犯上問題があるため、各自オリジナルマスクをつくることが義務づけられる。
マスクをかぶらなければならないが、マスクがかぶってはならないというのがややこしく、メキシコはいつも混乱している。
人気なのは、やはり国民的英雄で映画スターでもあるミル・マスカラス モデル。
額のイニシャル「M」を自分のイニシャルに変えて、太陽の光を模したラインの本数を変え、色を変えて個性を競う。
マスカラスがリングで使うマスクの生地はサテンだが、サテンは高貴なものと位置づけられており、キッサテン関係者のみに使用が許される。
ただし、サテン生地は通気性が悪く、キッサテンのマスターは顔がかぶれている人が多い。
「若い頃サテンのマスクをかぶれたのはいいけど、おかげで顔がかぶれてしまったよ」
というのが、キッサテンのマスターによるメキシカン・ジョークの定番である。
一般庶民は、安くて通気性がよいタオル生地を使う。
メキシコはコーヒーベルトに位置する、赤道に近い国。
一日中マスクをつけていると、顔や頭が蒸れて大変だ。
そのため、20歳女性はエステに通いお肌を手入れし、20歳男性はヘアサロンに通い頭皮をケアする。
「マスク役」のおかげで、この2業種は安定産業となっており、多くの雇用を創出した。
こうして、マスク役によって誰もが笑顔になれた。
初めのうち、なにを馬鹿なことをするんだと、政府に対して冷ややかだったコクミンも今は大乗り気。
同じ年頃の若者が兵隊にとられる国と比べれば、同じ「役」でも大違い。
メキシコに倣えと、多くの国が第二の役を模索している。
*これは短編小説なので、メキシコの皆さん
抗議しないようにお願いします。
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