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2009年12月 8日 (火)

「いっそセレナーデ」には、誰も逆らえない

●少年時代

 ピアノとギターのシンプルな演奏では、初めて聴く「少年時代」
 この曲は映画「少年時代」のエンディングのために書き下ろされた・・・
ということを この夏NHKで放送された「LIFE井上陽水40年を語る」で知り、DVDを借りることにした。

 まずTSUTAYAの店頭所蔵を検索すると、最寄りの店には元々、在庫すらない。
 つづいてTSUTAYAディスカスで検索。所蔵はあったが、本数がとても少なく、予約リストに入れてから届いたのは3ヶ月後だった。
 「少年時代」が最後に流れるまでの展開がインタビューで明かされていたので、この曲にどうつながるのかを想像しながら鑑賞する。
 エンディングの曲に向かって、謎を解いていくというのは これまでにない体験。
 そして、いよいよラストシーンにピアノの前奏が重なる。
 言葉を紡ぐのが面倒な人たちがつかう キタ~~~~~
 を打ち消すのに必死だった。

 どうやら、この曲がコンサートのエンディングになっている様子。
 袖に下がる陽水
 時計を見ると 20:43
 あっという間の 1時間36分

 ここまで 終始座ったまま聴いてきた我々は、引き続き座ったままでアンコールの拍手を送る。
 それを遮るように音響が鳴り、ステージ奥の電飾箱にスイッチが入った。
 そこでぴたりとアンコールの拍手がやみ、人びとは流れる映像に注目する。

 しばしの時が流れ、さぁ再びアンコールの拍手を始めようかという時、メンバーが左手の袖から現れた。
 列の最後に シャツを着替えた陽水。
 今度はもう皇帝には見えなかった。

アンコール
●アジアの純真
 ステージで聴くこの曲は圧倒的な開放感がある。
 視界のすみっこに、ちらほらと立ち上がる人影が見える。

●Love Rainbow
 このツアーの前半では、女性コーラスを一般公募していた曲。
 ツアー後半は、Rie fu を初めとする 3人が その任に当たっている。
 最近は女性と歌うことが大切なので・・・
 そのまんまの意味なのだろうが、最後まで陽水のMCは天の邪鬼なトリックスターのもの。

●夢の中へ
 満面の笑みに包まれる。
 コーラス・ガールズも満面の笑み

 これまで何百回となく、レコードの陽水とこの曲をはもってきた。
 今日は 7mの距離で陽水と歌う「夢の中へ」
 座ったままでも、陽水の姿はこの目に大きく映っていたが、この曲で立ち上がらずにはいられなかった。

 いったん、メンバーをステージ中央に集めて紹介する陽水。
 ファンの「まだ帰さないぞ」という拍手が圧力を強める。

 陽水は 左袖のスタッフに向かって 「いいかな?」というように首をかしげて目で合図。
 立てる指の本数を変えて「1」「5」のサインを送る。
 ブロックサインか?

●いっそ セレナーデ
 再び、観客は静まり、ロマンティック陽水の世界に沈んでいく。
 暑かった夏の一日を、波が静かに冷ましていくよう。
 だが、この曲を前にして「もっと、熱いのを頼むよ」と言える人はいない。

21:10
 「皆さんの幸せだけを考えています」
 何度もそう言った陽水

 推定20代の男性が、紙袋にはいったプレゼントを持ってステージに駈け寄る。
 どの年代からも満遍なく集客しているのが、陽水の特徴とみた。
 陽水は少し迷ったあと、受け取る
 すると手ぶらのおばさんが出てきて、手を差し出したがすぐ引っ込めた。
 ステージ前に来れば握手してもらえると思ったが、はたと我に返ったようだ。

 陽水が「さようなら」と手を振りながら、舞台左袖にさがっていく。
皆が座ったまま、拍手で見送る。
 "前の人が立つから仕方なく"
ではなく、立ち上がった。
一人スタンディングオベーション
回りや後ろの人が立つかは、もう関係ない。
陽水が見えなくなるまであと数秒。
"陽水 ありがとう"
彼の背中に叫んだ。

初陽水
長く心に刻まれる一日になった。
今年の「しらべるが選ぶ5大ニュース」の一つはこれで決まった。



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