コナン君の声でCW-Xを買う
川崎ハーフマラソンの結果は、自分が25kmまで 6分30秒/kmでいけることの保証となった。
ハーフマラソンの記録を元に、フルマラソンの記録を類推する数式は、文献によってまちまち。
ハーフのタイム×2.1 から 2.4まで幅がある。
今回のタイムに2.1を掛ければ、長野マラソンは完走できる計算だが、2.4を掛けたら制限時間の5時間を超えてしまう。
まだ、完走の保証を得てはいない。
さらにできることはないか。
ここまで積み上げて来たのだ。こうなったら後悔はしたくない。
できることはなんでもしよう。
川崎ハーフマラソンが好結果に終わったことに気をよくして、その足でランニングショップに立ち寄った。
目的はCW-Xの情報収集。
今は、幅広く商品を展開しているが、やはり「CW-X」と言えばロングタイツの代名詞。
マラソン書籍の記述、レビューでのユーザーの書き込み。
そのいずれを読んでも「あった方がいいに決まっている」商品と見受ける。
市民マラソンのテレビ中継をみると、多くの人がロングタイツを履いている。
既に初マラソンから CW-Xのショーツ(短パンの下着)
3度めのマラソンから CW-X柔流(半袖シャツ)
を使っているが、このロングタイツだけは手を出さなかった。
それは「どーだ、オレは履いてるぞ」という見た目からくる威圧感に抵抗があったからだ。
しかし、今はかっこつけている場合ではない。
いい物ならばなんでも取り入れる。そういう気持ちに変わってきている。
このレボリューションモデルとスタビライクスモデルは、機能的にはどう違うのですか?・・というふうに聞くと、店員に身構えられてしまう。
ここは、気持ちよくセールストークを語ってもらおうと思い、質問は小学生レベルにする。
コナン君の声で
これとこれはどう違うんですか?
そうきたか、青年
と言わんばかりに、ショップ店員サトウさんの顔が輝く。
青年って、僕はもう青年じゃないけどね。
質問がど素人だと、途端に敬意が目減りして 客を子供扱いする販売員は、日本中にいる。
どうやら、その一人のようだ。
サトウさんは論より証拠とばかりに、しゃべり出す前に行動に出た。
ラックにぶら下がっている「レボリューションモデル」と「スタビライクスモデル」を1つずつ取って、僕に手渡す。
「まず、こちらとこちらを持ってみてください」
どうやら「軽さ」をアピールする作戦に出るようだ。
その時点で、サトウさんの結論は「レボリューションモデルがいいに決まっている」と読めた。
右手に「スタビライクスモデル」
左手に「レボリューションモデル」
「明らかに違うでしょ?」
どうだ!と言わんばかりのサトウさん
確かに右手がとても重たく感じる。
もしかして「スタビライクスモデル」は什器のハンガーが重たいのではないか?
「レボリューションモデル」はS、「スタビライクスモデル」はLを渡したのではないか?という疑念がよぎったが、それを言うとほんとの子供になってしまうので、やめておく。
確かに右が重いですね。
そう言うが早いか、彼のトークがスタートする。
「こちらの(スタビライクス)モデルは、以前から売っていたものです」
"以前"ときた。
さりげなく 「旧い」「型遅れ」であることを暗喩している。
「一方、こちらは、えっと去年出たのかな」
"えっと" は別にもったい付けた演技というわけではなく、ほんとに正確に把握していない様子。
「お客様の声を聞いてつくられたのです」
もしかして、彼はワコールが認定しているCW-X販売員なのか。
発言がメーカー寄りだ。
ワコールは客に応じたお勧めができるよう、CW-Xの販売員資格制度を敷いている。
サトウさんはスタビライクスモデルを僕から受け取り、続ける。
「こちらの場合、布が重ねられています。それだけ重いですし、ランナーによっては縫い目に違和感があるという方も多いんです」
なるほど、確かに縫い目がはっきりしている。
ウィンドブレーカーパンツならば、縫い目があっても構わないが、タイツは肌に密着するので、けっこう気になるだろう。
もうこの時点で、スタビライクスモデルへの関心は薄れ始めている。
「そこで、性能はそのままに、こちらができたんです」
決定的な一言が出た。
今日はこれを聞きに来たのだ。
え゛、性能は同じなんですか?
スタビライクスというと、なんだかこっちは強力だぞという感じなのですが・・・
素人の割には、実は研究していることがばれ始める。
「はい、機能 性能は同じです」
この一言で、心は決まった。
肌につけるものだけに、試着しておいて、また来ますとは言いづらい。
だいたい、そういう客ばかりだったら、店頭にぶら下がっている品は気持ち悪い。
4年間、拒否し続けていたロングタイツを買った今、もう聖域は消えた。
レースまでの5週間、ここまでやるかという準備が加速する。
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