死語にならなかった、ミッションクリティカル
ミッションクリティカル 【 mission critical 】
「信用でき、消失すると甚大な影響がある」という意味をもつ言葉。
1998年から「重要かつ膨大」という意味でIT業界人の間で使われ始めた。
2001年には IT業界人、IT担当者の間で 常用IT語として定着していた。
業界人の中でも、ERPを売り込みたいベンダーの社員がよく使った。
ERPの目的の一つが、重要かつ膨大な情報の一元管理とその更新。
だが、ERPを入れる企業はまだ少なかった。
当時はまだ「コンプライアンス」という言葉も登場していない。
猫も杓子も「コンプライアンス」を口にし始めたのは、
2006年に「日本版SOX法」が国会で成立した頃からのこと。
法律による「外圧」がないならば、できるだけ、厄介で大がかりな投資は避けたい。
2000年、ERPを売りたいベンダー社員は苦労していた。
人に何かを考えさせるには、キーワードが必要だ。
後で言うならば
「個人情報保護」
「IR」
「コンプライアンス」
「環境」
これらの言葉は、経営者にお金を出させる時の後ろ盾、錦の御旗となる。
そこで、持ち出した言葉が「ミッションクリティカル」
企業のなかで、重要な情報が個人のパソコンに
あたかも 離れ小島のように点在している。
これらを統合すれば、強い経営ができますよ。
逆に統合しなければ、消失した時、どえらい損害になりますよ。
そんなことを、たらたらと言ってもインパクトが弱い。
そこで、ミッションクリティカル!
米国のラジオドラマのタイトルにありそうな、なんとも攻撃的でスリリングな言葉ではないか。
だが、2007年にふと気づいてしらべてみたところ、ほとんど使われていなかった。
新たにこの言葉を使い始める人はいない。
かつて、2000年当時に使っていた人が思い出したように使うだけ。
取って代わる同様の意味を指す言葉が生まれていないので、辛うじて死語になるのを逃れていた。
日本企業にITを売りたい人たちによって、外圧となる法律や言葉が多く登場して、もうミッションクリティカルと言わなくてよくなったのだ。
死語になるには惜しい。
いつもそう考えていたら、拾う神有り。
2010年4月末、日本HPが「ミッションクリティカル・システム最新戦略発表会」を開催する。
以下はそのリリース記事より
(以下、引用)
今や、ミッションクリティカル・システムに求められるものは、信頼性だけではありません。
更なる拡張性、管理性、仮想化、そして環境への配慮といった新たな要件を満たす、
柔軟で強靭なインフラストラクチャーであることが求められています。
(引用終わり)
これでは、なにを言っているのか、わかる人はとても少ないだろう。
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