うどん屋で初対面のキノコモルグ
キノコモルグはリアルタイムで見た。
山口県の盆地に住んでいた頃のことだ。
といっても火曜の6時に数ヶ月遅れで再放送していたほう。
土曜の7時にやっていた最新の放送(KBC)は電波の状態が悪くて、うちのテレビでは映らなかった。
今ならば、なんとか映るまで対策を講じるだろうが、子どもというのは諦めが早い。
不可能なものは、自分には縁がないものだと考えていた。
仮面ライダーを見始めたのが、キノコモルグの前編から。
友達の間で「仮面ライダー」というのが話題になっていた。
初めてチャンネルを合わせたその日。
いきなり、ライダーが負けて処刑台に乗せられた一文字隼人に電動のこぎりが迫る・・
というシーンで「つづく」
これで、一気に引き込まれてしまった。
ある日曜日、下関の親戚の家に遊びにきていた僕は、いとこのカズ兄ちゃんが「マリンランドにスケートに行く」という言葉に鋭く反応した。
サンデンバスで下関に向かう途中、下関マリンランドに「仮面ライダーショー開催」の垂れ幕が出ているのを見ていたからだ。
一生に一度、仮面ライダーをこの目で見たいと切々と親に訴える。
「あんなもん、つくりもんじゃないかね。カズちゃんに迷惑やろ」
母親は相手にしてくれない。
だが、少年の心を忘れていなかったカズ兄ちゃんが
「ええよ。オレが滑るあいだ待っちょってくれたら、連れてったげるよ」
ということになった。
カズ兄ちゃんがアイスリンクで華麗なステップを踏んでいる。
時々僕に向かって手を振るのに笑顔で応えながら、今日はどんな怪人が来るのか。もしかして一文字隼人役の佐々木剛が来ていたらどうしよう。と妄想にふけっていた。
「腹へっちょるんやないんか?」
アイスリンクから引き上げてきたカズ兄ちゃんが僕に問いかける。
仮面ライダーショー会場の右手には、小さなうどん屋があった。
「おごっちゃるで、遠慮すんなや」
そうは言われたものの、ここに連れて来てもらっただけで、一生この人に足を向けて寝られないと思っている。とても、それ以上の施しを受けるわけにはいかない。
「お菓子を買ってあげるから、着いておいで」
と誘われた子どもが誘拐された事件を新聞で読んで以来、僕は"タダほど怖いものはない"を座右の銘としていた。
うどん屋を営む友達の家に遊びに行き、
「motoちゃん、うどんしてあげようか?」
という申し出を固辞。
さらに「じゃぁ10円あげるから、お菓子でも買い」という申し出も拒否。
意固地な子どもだと思われたこともあった。
頑なに申し出を固辞する僕をしりめに
「ほいじゃ、オレうどん食うけぇ、ヨコにおり」
と連れられて入って行ったステージ袖のうどん屋。
なんとそこに、うどん屋のおばちゃんと談笑するキノコモルグ。
他に2~3人?の怪人もいたのだが、キノコモルグしか見えない。
「おばちゃん、天かす多めね」
とは言ってなかったが、間近でみるキノちゃん。
あまりの出来事に呆気にとられてしまい、サインももらえなかった。
ってもらってどうする。
キノコモルグにちなみ、来週につづく
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