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2010年8月10日 (火)

お金を返してくれない人が悪いのか、催促しない人が悪いのか

大変、不躾(ぶしつけ)なお願いなんですけど・・・
丁寧な言い回しで、サカタ君が切り出した

「実は、財布を家に忘れてきたことに気づきまして、お金貸してもらえませんか?」

関東地方に梅雨入りが宣言されたある週末の夕方のことだ。
同僚のサカタ君が僕の席にやってきた。

サカタ君がやってくる時は、たいていエクセルやパワーポイントの使い方についての質問だが、その日は違っていた。

いくら、あればいいの?
「1000円あれば、とりあえず」

恐らく、帰りにちょっと買い物をして帰るのだろう。
缶ビールとおつまみ、あとは何か手みやげ程度か。
格子模様の財布から 1000円を取り出して、サカタ君に渡す。

「助かります、すぐ返しますから あ、と言っても明日以降になりますけど(笑)」

この言葉が大嘘だった。

かつて、お金を貸したことで、苦い思い出がある。
返済を踏み倒されたといった苦さではなく、心にうっすらと残った傷が苦い。

大学生の時分、4畳半の下宿に間借りしていた。
部屋は全部で9部屋あり、九州のあちこちから田舎者の学生が集まっていた。
福岡1、熊本2、佐賀2、長崎3
1部屋は空き部屋だった。

コンコン
ある日、講義の空き時間に部屋で本を読んでいると、誰かがドアをノックした。
はす向かいの下宿人 マツダだった。

熊本県八代市出身のマツダは、言葉の末尾に「ほー」をつける。
そいでほー
ばってんがほー
まるで、フクロウのようだ。

欧州の一流ブランドだという、名前も聞いたことのない会社の5万円もするダウンベストがお気に入りで、授業に行く時も、家の中でもいつでもそれを着ていた。
しまいには、50m先からでもカーキ色のベストが見えると、それがマツダだと識別できた。

「来週、仕送りん来たら返すけん、5000円 貸してやらんや」

人にものを頼むにしては、ずいぶんな物腰だが、お金を貸したことがなかった僕は、難しくは考えず、財布から5000円を渡した。

ところが、仕送り日を過ぎた翌週になっても、5,000円は返ってこなかった。
返済を迫るのは下品な気がして、気が引ける。
催促すると 友達を信用していないように映り、関係にヒビが入るかも知れない。

幸い、日々の生活費に困っているわけでもない。
きっと、マツダにも何か都合があるのだろう。
黙って待つことにした。

同じ屋根の下に暮らしているので、マツダとはほぼ毎日、顔を合わせる。
だが、マツダは素知らぬ顔。

コン コン
2週間が過ぎ、そろそろ、生活費も心細くなって来た日
今度は僕が、マツダの部屋をノックした。
マツダは部屋の中でもカーキ色のベストを着て、持込が禁止されているカセットコンロで野菜炒めを作っているところだった。僕は丁重にきりだす。

あのさ、そろそろ、5,000円返してやらん?

あぁ~、ごめん、ごめん
ほんと、申し訳ない!

そういう、真摯な反応を思い描いていた僕に、彼の台詞が衝撃を与えた。

はぁっ?
なんや、それ
おいが金ば借りとったつや?

そやったら、なんで、はよ言わなん
言わな、わからんろーが

つづく

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