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2010年8月11日 (水)

「友達を失いたくなければ、金の貸し借りをしてはいけない」とは言うけれど・・・

マツダは野菜を炒める手を止めて、財布から5千円札を1枚とりだすと、
「ほれ」
と言って、こちらによこした。

こういう時、そういう態度はないんじゃないか?
と言ったほうがいいのか、それとも黙って引き下がるのがよいか。
それを判断する経験という材料を持ち合わせていなかった。

とにかく 5000円は無事、手元に戻った。
それと同時に、お金を借りたことを忘れるよりも、それを催促しないほうが悪いと考える人もいるということを学んだ。

社会に出て、ずいぶん時が流れた。
「貸した金は返ってこない。貸すならば相手にあげたと思って貸せ」
「友達を失いたくなければ、金の貸し借りをしてはいけない」
テレビドラマ、書籍、あらゆるメディアを通してお金の貸し借りにまつわる教訓を耳にしてきた。

だが、そういう教訓を知識として知っていても、いざ財布を忘れた友達を目の前にした時、1000円を貸さないという選択は難しい。
当然、翌日にはサカタ君がやってきて、こう言うはずだ。

「いやぁ助かった。昨日はありがとう。利息を100円つけるよ」

いやいや、それには及ばないよ。それならば、次のミーティングでコーヒーをおごってくれよ。
あ、その方が高いか・・(笑)

そんな、ジョークのやりとりまで想定していた翌日。
サカタ君は会社に来なかった。
事前に届けていた有給休暇の取得らしい。

腑に落ちなかった。
翌日に休むことがわかっているのに、明日返すよと言ってお金を借りる・・・
財布を忘れるくらいだから、翌日休むことも忘れていたのか。

その翌日、サカタ君が会社に出てきた。
しかし、彼は僕の元へやってこない。

1000円を借りて返さない大の大人。
1000円を督促するのは美意識に反すると考える大の大人。
互いの関係は、学生対学生から大人対大人へと変わっているが、状況は、遠い昔 マツダに5000円を貸した時と同じだ。

そういえば、なんか忘れてない?

僕が、そう切り出してみる。
すると、サカタ君はしまったという顔をして 1000円のことを思い出す。
日頃から謙虚で低姿勢なサカタ君のことだ。
彼は自身を責めるだろう。まさか、マツダのように開き直るヤツじゃない。
2人の間にうっすらと溝ができる。

さて困った。
関係を壊したくない場合どうしたらいいだろうか?
考えてみた。

1,忘れていたことにする。
こちらも忘れていたくらいだから、たいしたことないよ。
忘れていたのはお互い様さ
と笑って水に流す。
サカタ君が思い出して、1000円を返しにきたら、そう言おう。
この場合、難点は自分からは返済を求められないこと。
相手が思い出してくれないと、永遠にお金は返ってこない。実際、来る日も来る日も、サカタ君はやってこなかった。

2,不思議な力を使う
サカタ君とトイレで会った。
手を洗っているサカタ君に向かって

「おいサカタ なにか忘れてないか センエン センエン」

テレパシーを送ってみた。
だが、彼はハンカチを取り出して、とても大事そうに自分の指を一本ずつ丁寧に拭きながら去っていった。

つづく

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