熊本で止まっていたやつか、熊本は新幹線の通過点か
2010年9月3日のことだ。
2012年3月に全線開業する九州新幹線で、速達列車のダイヤ名が「みずほ」と発表されたのを受けて、鹿児島県の伊藤祐一郎知事(当時62歳)は定例会見で次のように述べた。
「他の列車で使われていた名前なのであまり好きじゃない。熊本で止まっていたやつの名前が付いちゃったんですよ。JRから事前に相談があったら反対していた」
鹿児島まで来ていたブルートレインは「はやぶさ」
1958年10月1日、東京-鹿児島間で運行を介したブルートレイン「はやぶさ」は、1997年11月のダイヤ改正で、東京-熊本間の列車となった。
「はやぶさ」も"熊本で止まっていたやつ"には違いないが、初めの39年間は鹿児島まで来ていた。
「みずほ」は1961年から1994年まで、東京と熊本・長崎を結んでいたブルートレイン(青い車体の寝台特急)で使われていたダイヤ名。
ブルートレインは乗客の減少により、現在はすべて廃止されているが、なかでも「みずほ」は真っ先に廃止された。
"熊本で止まっていたやつ" が、県境を越えて鹿児島に入ってくることが、県知事のしゃくに障ったようだ。
9月15日
JR九州は正式開業日を2011年3月12日と発表。
博多駅と鹿児島中央駅に「開業まで、あと●●日」のカウントダウンボードを設置した。
そこには西郷隆盛のイラスト「西郷どーん」が描かれている。
人は相手に好かれていると思うと、相手にも好意を抱く。
しかし、相手が自分を嫌っていることがわかると、相手に嫌悪を抱く。
「西郷どーん」のカウントダウンボードは、近々熊本駅にも設置される。
すると、今度は熊本が怒る。
「熊本は新幹線の通過点になるという意味か」
熊本市の自治会会長らが 9月21日、JR九州熊本支社にカウントダウンボードのデザイン変更を求める要望書を提出した。
要望するのは自由だが、言い方に品がない。
熊本駅に西郷隆盛の看板が立ったことが既成事実となり、新幹線ダイヤが熊本を通過することにつながる・・わけがなかろうが。
もしも将来、熊本を通過するダイヤが設定されたとしても「西郷どーん」の看板とは何も関係がない。
むしろ、そういう高をくくった言葉が、将来の望まない事実をぐいっと引き寄せるのだ。
9月29日
熊本駅に設置されるカウントダウンボードには「西郷どーん」ではなく熊本県の観光PRキャラクター「くまモン」が描かれることになった。
このように、近県同士でいがみ合っている両県に、あなたは旅をしたいだろうか。
こんなつばぜり合い、メディアを巻き込んで、喧伝しあうことではない。
熊本や鹿児島で観光客を相手に生業を営む人にとって、どれだけ迷惑なことか。
こういうエライ人は、争うことが大好きなDNAを先祖から受け継いでいるのだろう。
鹿児島は、将来、熊本止まりのダイヤが設定されることを恐れる。
熊本は、将来、熊本通過のダイヤが設定されることを恐れる。
恐れることは悪くない。
ただ、その恐れを「より多くの乗降客を獲得する努力」に転化しなければならない。
メディアを巻き込み、圧力を掛けて利を得んとするのは、努力の方向がまちがっている。
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