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2011年1月 1日 (土)

北林谷栄の「阿弥陀堂だより」にこめられた願い

年末に「阿弥陀堂だより」の文庫を読み始めた。
年間読書計画を終えたら、ゆっくり読もうと思い、楽しみにとっておいたのである。

「おや、どなたさんでありますか」
その台詞で、北林谷栄さんの姿がくっきりと脳裏に蘇った。

行きつけのビデオ屋さんでカバー写真に惹かれて借りた「阿弥陀堂だより」
2010年に見た200本の映画の中で、自己評10点をつけた4作品の一つとなった。
この映画を見終えた後、感想メモにこう記した。

自然 優しい人 人間はこういう世界で生きていたいという願いが込められている

このような世界で生きていきたい。
だが、都会の便利さ。都市に集う友だち。刺激的なできごと。
そうしたものへのこだわりは捨てがたい。
だが、人はこのような場所で生きてきたし、これからも生きていけるのだ。

北林谷栄は、老婆の役どころで抜群の冴えを見せた女優。

1911年
5月21日、東京都銀座に生まれる。

1938年
「左義長まつり」出演。
北林谷栄この時 27歳。
宇野重吉による配役で初めて老婆役を演じ、それ以来"老婆"が はまり役となる。

1947年
宇野重吉と劇団を立ち上げる。

1983年
「男はつらいよ」31作「旅と女と寅次郎」出演。
マドンナ役の都はるみと寅さんが佐渡で泊まった宿のおばあさん役を演じる。

1991年
5月、最初の著書「蓮以子八○歳」新樹社 出版
映画「大誘拐」主演
大富豪の老女役。人質でありながら、犯人に脅迫の智恵を授けるというレトリックに引き込まれる。
1990年代の邦画は、2010年の今見ると古びて見えるものが多いが、この作品は北林谷栄の活躍だけで、二度三度見る価値がある。
テレビを使った誘拐犯というアイデアは 2008年の映画「犯人に告ぐ」(豊川悦司主演)でも使われた。

2002年
映画「阿弥陀堂だより」主演
この映画で日本アカデミー賞助演女優賞を受賞。
DVD特典に収録された映像では「重ちゃん(宇野重吉)の息子アキラちゃん(寺尾聰)と一緒に仕事ができたことが嬉しい」と涙ながらに語っている。

2004年
3月、著書「九十三齢春秋」岩波書店 出版
こちらは、インタビュー記事をまとめた本。これが最後の著書となった。

2010年
5月の誕生日で99歳を迎えるはずだったが、
4月27日、肺炎で亡くなった。享年98歳

「おや、どなたさんでありますか」

文庫本を読み進めるにつれ、北林谷栄、樋口可南子の映像が想起される。
はまり役なのだ。
だが、主人公孝夫から寺尾聰の顔が浮かばない。
映画から見た時は、なんの違和感も感じなかったのだが、謙虚さ、時に卑屈さが交差するこの人となりと、寺尾が持つ芯の強さが結びつかない。

小泉堯史監督はまず、おうめばあさんに北林谷栄を決めただろう。この原作で北林以外を起用することは、日本中の映画監督にとって難しい。
そして、北林谷栄と宇野重吉の縁からして、「雨あがる」にも起用した寺尾を配したのはごく自然だった。だが、小泉-寺尾コンビの映画は、どこか煮え切らない。

文庫を読み終えた。

見てから読む。
読むとまた見たくなる。
「阿弥陀堂だより」を次に見る日が楽しみになった。
そしてまた、人間固有の願いをそこで思い出したい。

明けましておめでとうございます。
お陰様で「しらべる」は12年め。
「しらべるが行く」は6年めを迎えます。
今年も時々思い出して、読みに来てくださいね。

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コメント

作者の南木佳士は秋田大学医学部卒のため、阿弥陀堂だよりは県立図書館の*県関係図書*コーナーに並んでいます。初めから、おうめ婆さんは北林谷栄のイメージで読んでいましたので、映画も安心して観ました。

寺尾聰が広報を配りながら地元の年寄りに昔話を聞くシーンは…要らなかったなぁそこだけ旅番組みたいな印象を受けました。

田村高広のシーンは原作には無かったように思うのですが、
香川京子の『私も、じきにいきます…そう長くは待たせませんョ』の台詞は胸に沁みました。

投稿: の・いそじん | 2011年1月15日 (土) 17時54分

の・いそじんさんコメントありがとうございます。
映画を思い出しながら読んでいて、映画にあったあのシーンが原作にないな・・と考えていました。北林谷栄さんの一周忌までにはもう一度、見ようと思っています。

投稿: moto | 2011年1月16日 (日) 13時58分

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