寅さん360度
このタイトルで、この後の展開が読めた人はなかなかの "寅さん通"である。
柴又駅の改札を出てすぐ、クルマは入ることができない 歩行者だけの手狭な駅前広場。そこに寅さんの銅像が建っている。
柴又に来る人は、少しは下調べをしてくるわけで、その第1チェックポイントが柴又駅前の寅さん像。すべての散歩者がカメラを持つ時代となった今、ここでいい写真が撮れるかどうかが、柴又散歩の成否の鍵を握っている・・・ わけではない \^^)オイオイ
寅さんの視線の正面に立って、まず一枚。銅像の視線は焦点が定まっておらず、この角度には寅さんの風情が漂ってこない。アドレスをとって、カラダを左にひねり、170ヤード先のグリーンが空くのを待っているような、無心の境地を感じるポーズである。
この日は土曜日の午前。まだ、人通りは多くない。寅さんの360度周りに、人影もまばら。散歩仲間との待ち合わせ時間が来るまで、被写体としての寅さん像を研究してみることにする。
寅さんのカラダと正対した角度から、ほんの少し左側。右の頬の立体感が出ると、寅さんの表情に笑みが浮かび上がる。その視線の先には幼気な子どもに乳をやる若い母親の姿があるかのようだ。
寅さんのカラダに正対。ここを「0度」と定義する。
この角度では、寅さんの足の短さが、目に飛び込んでくる。スーツやズボンのシワ、曲面加工がすばらしい。一見、単色ではあるが塗りもきめ細かい。それに何より屈強だ。いったい、どれだけ銅を使ったのか。ちょうどこの頃、亀有では銅像の一部が折れたり、曲がったりする被害が報道されていた。寅さん像は、そういう話とは無縁である。
寅さん45度。広場の中央に立つ寅さん像は日時計の役割も果たす。午前11時の影は、寅さんの背後に向かって伸びている。表情が見えないため、寅さんの人となりが伝わってこない角度。
顔の表情がまったく入らない背中側はパス。
寅さんの背後を通り、正面から270度に回り込んだ。この角度からは、柴又駅の看板がフレームに入る。
ホームのベンチに座って、せんべいを食べる市場帰りの老商。あるいは、今ならばゲーム機やケータイに没頭して、この世に魂を置いていない若者。世の哀れを慈しむ、あてのない視線を投げている。
ポケットにつっこんだ左手がいなせで、かっこいい。
人垣が切れて、寅の向こうに改札が見通せると、旅の男寅さんの風情が沸き立つ。「男はつらいよ」では、寅が柴又に帰ってきたシーンは江戸川の土手。旅立ちの別れのシーンは柴又駅が多用されている。もの悲しい寅の姿が、この駅には似合う。
ちょうど、ベストの角度を見つけた頃、1人1人と散歩仲間が改札を抜けてやってきた。
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