ペースメーカーとの会話
ゴールラインを2歩過ぎたところで、時計を止める。
自己ベストという最低限の目標を守った。
ガッツポーズは心の中だけにした。
ゴールしたランナーはすぐに順路に沿って、競技場の外へと誘導される。
去年の長野のように、場内でしばし余韻に浸ることはできなかった。
上り階段でつんのめってこけた。
正面には給水テントが待ちかまえている。
今日初めてのスポーツドリンクだ。
椅子が3つ出してあったので、どっかと腰を下ろす。
ぎつかっだ~
公衆の面前で大声を出してはいけないと躾けられてきたが、ここは42kmを走ってきたランナーの甘えだ。
笑顔で見守るテントのおじちゃん、おばちゃんが言う。
「いいところでしょ?また来てくださいね」
そうですよね。走りやすいし、もっとたくさんの人が来ればいいのにですね。
おじちゃんによると、特にランナーの定員は設けられていないが、いつもこれくらい(400人弱)の参加者にとどまるらしい。
大会談義に花を咲かせていると、隣の椅子に1人の女性が座った。
そのグレーのシャツに見覚えがある。
折り返しまでペースメーカーにしていたスズキさんだ。
ずっとペースメーカーにさせてもらってました。
へぇそうなんですか
きつかったですね。
そうですね
聞くと、スズキさんも東京からの参加らしい。
もしかしたら、僕と同様にお目当ての大会が中止になったのかも知れないが、あまり詮索するのは不作法なので、それ以上は聞かなかった。
ありがとうございました
スズキさんが立ち去った後、スポーツドリンク2杯めのお代わりを飲み干し、礼を言って立ち上がる。
そこで、思い出した。
そうだ。ウエストポーチには500円玉が入っているんだ。
4年前のかすみがうらマラソン以来、走る時はいつもポーチに500円玉を1枚いれている。
かと言ってレース中に買い食い(飲み)したことはない。
今回はこれで買いたいものがあるぞ。
スポーツセンターの入口にコカコーラの赤い自販機が見えている。
果たしてアレはあるだろうか?
ジョージアヨーロピアンコクの微糖
きつい練習をした日は、ナチュロで買い求めて一気飲みしていた缶コーヒーだ。
あった!
節電の観点からみて、確かに世に自販機は多すぎるが、他に店がないこういう場所では、自販機が必要だ。
今度は自販機前のデッキチェアに陣取り、ぐいっと飲み干す。
やはり美味い。
のどごしの苦さは、いつも以上だ。
ヘッドホンからは、セットリストの最終曲「In this country」Robin zander が流れてきた。
かつてF1中継(CX)のエンディングで使われていた曲。
人知れずナルシストになる。
コースアウトして悔しがるアラン・プロストの気分になっていると、背後から声がした。
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