14年 フォームポジットとのお別れ
フォームポジットとお別れの日が来た。
2011年、梅が終わり、桜の開花を待っていた頃だ。
この日がくるのが怖くて、だましだまし使っていたが、もう限界だった。
1997年5月
得意先のタケダ社長の自宅にお邪魔した時だ。
「motoさん、これどう思う?こないだハワイで買ってきたんですよ」
えぇっフォームポジットじゃないですかっ ・・)
*その日の話→1996年 携帯電話 5000円
僕は驚いた。リップサービスではなく。
その靴の存在は早くからBoon!などのコレクター誌で紹介されていた。
だがその時点では、日本では発売されておらず、発売時期についてナイキショップで尋ねても当然のごとく「わかりません」と言われるだけ。
(当時のナイキは、お高くとまっていた)
過去に見たことのないアッパーは、まるで宇宙人の靴。
この形容は僕の中から出たものではなく、この靴を見せた同僚が「宇宙人の靴みたいですね」と言っていたのである。
美味しいものを評価する時「やわらかい」という形容が多用されるように、靴については「履きやすい」という表現がよく使われる。
だがこのフォームポジット、写真を見ただけで、履きにくそうな靴であることは一目瞭然。
コレクター仲間の間では
「飾る分にはいいけど、履けない靴は見送りだな」
という意見が大勢を占めていた。
ファッションとコレクター雑誌「GET ON!」 1997年6月号では次のように紹介されている。
(以下引用)
シグネチャーゆえペニーの足にはジャストなのだろうが、多くの人の足にどれだけフィットし、なじんでくれるのかが気になるところ
(引用おわり)
どれだけ馴染んでくれるのか?
14年の時を過ぎて今、その答えを言うならば、これが不思議にフィットしたのである。
タケダ社長に見せてもらった3ヶ月後、フォームポジットの国内発売日。
「US9.5から出して」
僕はビースクエアにいた。
同時期発売のエアマックスが18,000円
(フルレングスエア 銀色のアッパー 通称エアマックス98)
この靴は25,500円。
群を抜いて高かった。
目の前にあるフォームポジットは美しかった。
樹脂アッパー
母なる海を思わせる魅惑の蒼
曲線の溝を指でなぞって、うっとりした。(後に出たフォームポジットプロは、スウッシュが邪魔してこれができない!)
この陶酔が永遠であればいい。
だが、ナイキの靴には加水分解という宿命がある。
これはナイキの靴が、ビジブルエア(外観から目に見えるエア入り)のミッドソールを多用しているための特徴である。
他社の靴が使えなくなるのはそれ以外の理由だが、加水分解がある分、ナイキの靴は寿命が短い。
それは、寿命がわかりやすいとも言えるし、諦めがつけやすいという考え方もできる。
ビジブルエア、一般的に「**MAX」という商品名の靴はおよそ7年~10年程度。
ナイキのもうひとつの柱「ZOOM AIR」の場合、寿命はそれより長い。
加水分解が起こらないからだ。
フォームポジットはZOOM AIR。できれば長持ちして欲しい。
その後、買い足したオールブラックのフォームポジットプロは7年ほどで加水分解して寿命を終えた。
頻度高く履いた方が、先にしまえるというのは不思議だった。
10年ほど経った時
アッパーにひび割れが入った。
間隔を開けて履けば、まだ使える。
(ここで言う間隔を開けるというのは、1年に4~5回)
だが、その時は来た。
ミッドソールつま先側に、加水分解を示す粉吹きの症状が出た。
廃棄直前のフォームポジット
見た目は固そうだが、履いてみると違和感はなかった。通気性がないため夏は履けないが、その分冬は暖かくて重宝した。そして何よりその偉容。履いていて「どーだっ」という気分になれるのは、この靴だけだった。
復刻がつづく ナイキクラシック。ファーストの蒼が出たら、この靴はもう一度履きたい。
→1ヶ月遅れてフォームポジット黄色の発売に気づく(2015年1月記事)
→ノモマックスとお別れの日
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