日本で都市と地方の情報格差があり、ネットの意見交換が低調な理由
インターネットの前身に「パソコン通信」があった。
パソコン通信は2006年になくなったので、それ以降にネットを始めた世代は名前すら知らない。
インターネットの本格普及が始まった1997年以降にパソコンを始めた人は、名前は知っているが会員になったことはない。
パソコン通信の話で盛り上がるのは、1996年以前にパソコンを始めていた先駆者たちである。
パソコン通信、しらべるの定義は「サービスをする側とサービスを受ける側で閉じられたコンピューター・ネットワーク CUG:Closed User Group 」
インターネットの場合、会員になる必要はない。ID、パスワードによるログインはなく、ブラウザーを立ち上げれば見ることができる。
パソコン通信は、ネットワークを開局しているパソコン(サーバー)があり、そこにつなげるためにはIDとパスワードが必要。
開局している業者の会員になり、IDとパスワードをもらう。
ニフティのユーザー名が8桁の半角英数字(連番)なのは、その名残である。
開局者(以下プロバイダー)は全国に接続電話番号を設けている。
それをAccess Point アクセス・ポイント(通称AP えーぴー)
APとは、プロバイダーが用意しているインターネットにつなぐ(=ダイヤルアップする)ための電話番号。
パソコン通信では「接続料」とは別に「通話料(電話代)」がかかる。
インターネットでも、常時接続(使い放題)サービスが一般的になる前は、つなぐ度にAPに電話をかけて、通信料とは別に「電話代」も払っていた。
常時接続サービスでは通信料に収れんされており、電話代を別途払うことはない。
電話代は当時、市内通話料が3分10円。
市外通話は大幅に高かった。
市内通話でかけられる、同一局番のAPがあれば通話料が安く済む。
プロバイダーが会員を増やすためには、APを全国に張り巡らすことが重要課題。
全国規模でやっていることを宣伝する時に「全国162AP!」というように宣伝していた。
ただし、AP設置はお金がかかる。
あまり会員数が見込めない地域には、APが設置されなかった。
1990年代の市町村数は、およそ3,300。
→市町村数の推移
最大手プロバイダーであるニフティのAP数は203だったので、3,100の市町村にはAPがなかったことになる。
地方に住む人にとって、市内通話料金でかけられるAPがないことが、パソコン通信に参加する障壁となっていた。
パソコン通信当時、コミュニティ参加ユーザーは東京に偏っていた。
インターネット時代となった今でも、ユーザーは大都市に偏っている。
日本において都市と地方の情報格差が根付いてしまったのは、1990年代のAP数が原因。
パソコン通信を一企業のサービスに過ぎないとみて、AP拡大に手を貸さなかった郵政省(当時名称・現在は総務省)に原因がある。
パソコン通信大手3社 ( )内は経営する会社
Nifty-Serve(富士通・日商岩井)
PC-VAN(NEC)
people(IBM)
パソコン通信会員は、モデムを使ってAPに電話をかけて接続する。
パソコン通信は1カ所のサーバーとしか接続できないが、これを世界中のサーバーと相互に接続したのがインターネット。
パソコン通信を相互に(inter)繋いだのが、インターネット。
文字、画像情報を受け身で見ることが中心のインターネットに対して、パソコン通信は文字による情報が大半だが、双方向的な意見交換の場だった。
日本においてネットの意見交換が低調なのは、1990年代のネット創生期に大都市にユーザーが偏っていたことに原因がある。地方において先駆者となるべきだった人たちの手元にネット環境が届かなかったのである。
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