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2012年4月27日 (金)

サンジョルディが日本で普及しない理由

スペインでは、5年ぶりに還付脳*でレアル・マドリーがバルセロナを破った2日後。
そのスタジアムがあるカタルーニャ地方にサンジョルディの日がやってきた。
*カンプ・ノウ スペイン語で「新しいスタジアム」ATOKでは還付脳が第一候補として提案される。

4月23日 サンジョルディ
バルセロナがあるスペイン東部カタルーニャ州に伝わる風習。
スペインの作家セルバンテスの命日にちなむ。
この日男性から女性に赤いバラを贈り、女性から男性に本を贈る。

日本には1985年に伝来した。
1995年にユネスコが4月23日を「世界本の日」に定めた。
2002年に日本でも4月23日を「こども読書の日」に指定した。
だが、伝来から27年経った今も日本における「サンジョルディ」の認知度は低い。

今年は本をもらったよ
私は本をあげたわ
という方がいたら、ぜひどんな本だったかコメントを付けて欲しい。

女性が男性にチョコを贈るバレンタインデー、男性が女性にお菓子をお返しするホワイトデーがこれだけ普及している国だ。
外国の風習に抵抗はない。
スペインの風習であることは、取り入れない理由にはならない。
レアル・マドリーのファンならば「カタルーニャの風習なんて真似できるか!」と突っぱねるのも一興だが、レアルファンは日本国民のごく一部である。
日本にはFCバルセロナファンがこれだけいるのだから、ご当地カタルーニャの風習にこだわる人がもっといてもいいくらいだ。

チョコには「本命チョコ」「義理チョコ」があるのだから、本にも「本命本」「義理本」があっていい。
本命本は「1Q84」などの分厚くて高価な小説。
義理本用にはワンコインで買える「サンジョルディ向け実用シリーズ」を出版する。
チョコは「手作り」する人がいるのだから、本も自分で書いて贈る人がいてもいい。
もらった人は引くだろうが・・

チョコの場合、お返しまでに1か月ある。
予期せぬ女性からチョコをもらったとしても、お返しを買ってくる時間はたっぷりある。
だが、サンジョルディは同一日。
女性から本をもらった男性は、すぐに花屋へ。
男性からバラをもらった女性はすぐに本屋に走る。
就業時間中に買い物に行く人が続出して、日本企業は麻痺する恐れもある。

サンジョルディが普及しない最大の理由は"選びにくさ"だろう。
チョコレートであれば多少のバリエーションはあるものの
「俺はベルギー産のカカオ以外は興味ないんだ」という男はいないし
「カカオサンパカのセットは既に1つ持っているから2つは要らない」ということもない。
チョコレートの中からそばが出てきたり、納豆やピーマン入りというのはないので、アレルギーや好き嫌いとも無縁だ。

一方、本はそうもいかない。
政治経済・人生訓・生活実用・スポーツ・ホビー
どれをとっても、そのタイトルには強いメッセージがある。
ガンダムが好きな人に「ペーパークラフト付きガンダムコンプリートBook」を贈れば、大いに喜ばれるだろう。
だが、それだけ好きな人ならば既に自分で買っていてダブるかも知れない。
プレゼントを開封してみたら既に持っている本だったとなると、互いに気まずい。

何より、狙いを外した時の"なんで俺にその本なの?"という反応が怖い。
恐る恐る選ばなければならないのだ。
下手をすると2~3冊予備を買っておいて、相手次第で二の矢、三の矢を打たなければならない。

相手の嗜好に精通したうえで、日頃の図書購入動向まで把握しているような間柄となると既にかなり親密。
夫婦や恋愛進行中のカップルに限られる。
新たな愛を育もうと夢見る男女にとって、サンジョルディはレギュレーションが厳しすぎるのである。

それでも4月23日に本を贈る風習を根付かせたい!
そう思っている人が、今の日本にどれだけいるだろうか。
来年こそ、業界の皆さんに新機軸を期待したい。

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