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2012年4月29日 (日)

エキスだけ教えて

ある時、僕は飛込のセールスマンだった。
商品を売ってもらう代理店を開拓する営業である。

名刺を渡して名乗り、少しだけお時間をいただけないかと頼みこむ。
アポもない飛込の営業にそう長い時間はもらえない。
10分ももらえればいい方だ。

その日は運良く社長さんがいて、少しだけならと話しを聞いてくれた。
自己紹介もそこそこに、カタログを見せて商品を紹介する。
商品に興味ありと見て取り、販売方法の資料と経営試算表を取り出す。
ところが、そこでタイムアップ。

社長さんが言った。
「エキスだけ教えて」
あらがうことはできない。もったいつけて出直すような腹芸をするケースでもない。
手短に要点を話す。
どれだけ、メリットが伝わったかは闇の中。
それでも縁があれば取引につながるし、縁がなければ二度とお座敷はかからない。
出会いは一期一会だ。

またある時、僕はパソコンのインストラクターだった。
ワードについて教えて欲しいという要望に応じて、講師に立つ。
60分の講義は概ね好評だった。
受講者の顔が輝いていることを見て、そうとわかる。
和やかな空気の中で、年長者の佐藤さんが手を挙げた。
「ほかにどんなカリキュラムができるの?」

たとえば、プレゼンテーションで相手に伝わるスライドショーの作り方ですね。それは1時間コースです。
1時間かぁ・・ 時計を見ながら佐藤さんが言い放つ。
「エキスだけ教えて」

これはニュース番組のキャスターが「ずばり、どうですか?」と尋ねるのと同じだ。
ご託は並べなくていいから、要点だけ言ってくれと言っているのだ。

エキスだけを端的に話すことはできる。
ただし、エキスだけで真意を伝えるのは難しい。

60分の話しを1分で伝えた場合、背景が伝わらない。
結局、その情報は5%のエキスと95%の聞き手の解釈という情報に置き換わる。
聞き手の解釈はその人の予見、先入観である。
たいていの場合は、なんだそんなことかよと思われて終わりになる。

「言葉が一人歩きする」というのは、その言葉が持つ真意がそぎ落とされて、字面だけが伝播することをいう。
人の言葉を一人歩きさせて平気な聞き手は大勢いるが、
自分の言葉を一人歩きさせたい語り手は少ない。

エキスだけを聞かれて、エキスを答えるのは相手を尊敬している場合に限る。
言葉を一人歩きさせない人だと信頼できる人だけだ。

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