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2013年1月11日 (金)

大所で勝負するタイプとは?

ある日、僕は勤勉なセールスマンだった。
朝早くから夜遅くまで、一軒でも多くの販売店を訪問した。

それまで、同じ地域を担当していた先輩たちが、行ったこともないような町の販売店にもお邪魔する。
「おたくの会社の社員が来たのは初めてだよ」
そう言って、驚いた顔で店主達が迎えてくれた。

それは、そうする必要があったからだ。
社会に出て間もない時は、自分には何の力もない。
多額の販売促進費を持っているわけでもなければ、相手が喜びそうな市場の情報もない。
人間関係もなければ、巧みな話術もない。

あるのは時間と体力。
そして、会社から支給されているガソリンカード。

一生懸命やっているのだが、なかなかノルマの売上げに届かない。
だからこそ、一軒でも多く回る必要があった。


そんな地道な努力の甲斐があり、数字はなんとか目標を超えた。
月に一度の営業会議の席。
並み居る先輩たちの前。

「今まで誰も行かなかったようなお店も開拓して、数字も伸びた。よくやっている」
支店長は、こう言って労ってくれた。
そして、返す刀で「どう思う、サトウ?」

サトウさんは、僕よりも1期上の先輩。
僕と歳はさほど離れていないのに、堅調な売上げを示している。

サトウさんは、こう切り返す。
「僕は大所(おおどころ)で勝負するタイプですから」

この言葉を聞いた時、サトウさんが僕を強く意識していること。
つまり、対抗意識を持っていることを感じると共に、器の小さい人だと想った。

コマネズミのように働くのもいいけど、自分はもっと効率よくやってみせますよという台詞。
同格の人で、普通の神経の持ち主が相手だったら、大げんかになるところだ。

 

歳をとれば、人間関係ができる。
実績ができれば、大きな市場を任され、使える経費も増える。
人間の幅が出て、情報も豊富となれば、大手販売店の社長も一目置く。
そうなると、大所で勝負できるようになる。

だが「大所で勝負するタイプ」という筋道は間違っている。
それは「ビッグな俺を、もっとうまく使ってくださいよ」
と言っている青二才に等しい。

(次回 「キンタマをにぎる」)

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