それは律儀な自販機 それとも裏ワザなのか
1年に1度、彼はやってくる。
年に一度だけ、用事でやってくるサトウくん。
もうあれから1年経ったのか。
この前に来たのはまだ、つい最近だったような気がする。
近くのフードコートに行って小一時間
この1年間について、近況
いや年況を語り合う。
コーヒーはいつも僕がおごり。
最近、そこに入った自販機のコーヒーはけっこう本格的だ。
出来上がりまでの時間がカウントダウンされる。
その間、カップは見えない。
時間が「0」になるとドアが開き、そこにカップがある。
カップには飲み口がついたフタがはまっている。
倒したら全滅
という自販機カップコーヒーの常識が覆る。
初めて、買った時は目を見張った。
お金入れるから、まぁなんでも好きなの押してよ
あ、まちがえて冷たいの押さないでね。
こないだ間違えて、エライ目に遭ったんだよ。
サトウくん遠慮したのか140円のコーヒーを押す。
この値段でも、ドリップ式の本格的コーヒーだ。
僕がお金を入れる。
待ち時間がカウントダウンされてできあがり
サトウ君がコーヒーを取り出す。
ちゃりんりゃりん・・
お金が戻ってきた。
「今日はタダの日? ですかねぇ」
怪訝なサトウくん
あるいは当たりか?
でもぴぴぴぴぴとか音しなかったな。
つづいて170円を入れて、違うコーヒーのボタンを押す。
今度は返金はない。
ハズレなのか。
これ戻ってきたので
そばにあるサンドイッチスタンドのカウンターにいたお姉さんに、事情を話して140円を渡す。
互いのコーヒーを持って、とっておいた席について話し始める。
彼のお子さんがサッカーを始めたこと。
最近気づいた、トレーニングのポイント。
こういうのは情報交換ともいう。
互いに相手のことを知りたいと思う。
その情報価値を認め合っている。
そういう時、情報交換という言葉が成立する。
あちっ
サトウくん、飲み口の穴から少しこぼしてしまう。
シミにならなかったかな
少し心配したが、サトウくんは特に動じていない。
一年が経つのは速いね。
歳を取ると大半のことが経験済みになって、時が経つのが速くなるのだけれど、それにしても速いね。
しかし、さっきからサトウ君のノリが悪い。
なにか、心にわだかまりがあるのかな。
すると、意を決したサトウ君
会話が途切れたところでこう言った。
「140円戻ってきた理由がわかりました」
え?
サトウ君、フタを外して僕に見せる
まさかゴキブリが入っているのか?
そんなわけはない。
透明だ
入っていたのはお湯だった。
人はコーヒーを買うとコーヒーを飲んでいると思い込んでいる。
念のために自分のコーヒーも蓋を取る。
こちらは色が付いていた。
恐らく、返金の理由はお金を投入したタイミングが遅かったのだ。
しかし、手順を誤った客にお湯を出す自販機は律儀だ。
そして、これはタダでお湯を飲む裏ワザなのかも知れない。
→しらべる
| 固定リンク | 0
「くらし」カテゴリの記事
- 夜中のピンポンは雷さんのピンポンダッシュ 電源タップの選び方(2024.09.08)
- 長崎を最後の被爆地に(2024.08.11)
- 原爆炸裂から79年 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典(2024.08.10)
- いち早くマイナカードを作った人たちが最初の更新時期を迎えている(2024.08.03)
- 男性の日傘元年 男の日傘デビュー 男の日傘の選び方(2024.07.29)