後ろに目がない人たち
マラソン本番を走っている
エイド(給水所)が近づいてきた。
終盤のエイドでは、どのランナーも意識がもうろうとしていて危険だ。
ここで、他のランナーと接触したら互いに怪我のリスクがある。時間のロスにもなるので、なんとか無事に給水したい。
できるだけ、人が少ないテーブルを見定めて、徐々に進路を左にとっていく。
そのとき、前を走っていたアベック・ランナーが突然、立ち止まり、90度進路を変えてテーブルに歩き始めた。
しかも、2人は手をつないでいる。
僕は2人が作ったゴールテープを切った。
全国の仕事場では、今日もうつろな目をした人達がパソコンに向かう。
脳を元気づけるために、朝コンビニで買ってきた甘いジュースが、実は低血糖を引き起こしていることに気づいていない。
パソコンの画面だけが、その世界となっているおじさんとおばさんたち。
決して広くない居室スペースのことも
同じ職場には他人がいることも
すっかり忘れている。
サトウさんが、トイレに立つ。
ただでさえ狭い通路をすり抜けるようにステップを踏んでいく。
通路の両脇には互いに背を向けた、うつろな人たち。
もう少しで広い廊下へと出ようとした時だ。
50代の窓際おじさんが、突然椅子を1m引いた。
椅子で膝を打ち、痛がるサトウさん。
でも窓際おじさん。それには気づかず、何事もなかったかのように、また椅子を戻した。
あまりに実務が空虚で、時々、体を動かすらしい。
「後ろにも目を着けなさい」
かつて、賢い母さんかっぱえびせんというCMがあったが、賢くない母さんはこうした躾をしないで、我が子を世に送り出す。
罪だ。
大きな罪だ。
幼少の頃、まっとうな教えを親から請わぬまま、つまらない大人になってしまった人々に、その言葉は届かない。
はあっ?
後ろに目ぇっ?
ぶわっかじゃないの?
その言葉は貴方のためにある。
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