スマ歩渋滞 彼らは時速何キロで歩いているのか?
ある晴れた水曜の朝
地下鉄の駅につながるコンコースは、仕事へ向かう人たちでごった返している。
うつろな表情のおじさん
無表情なおばさん
身なりに気合いが入っているOL
ただ、彼らはいずれも無色だ。無職ではない。
あたかも、存在を打ち消しているよう。
どうか、この町に潜む悪魔に見つかりませんようにと、言っているかのようだ。
これだけ人がいるのに、人間観察の興味をそそられるような人は少ない。
自分もご多分に漏れず、その一員。
ただ、周囲の流れよりも少し速く歩いている。
長い年月で身についた習慣だ。
すると、前を歩いているOLとの距離が近づいてきた。
彼女は落ち込んでいるのか、ややうつむき加減。
右手を胸の前に置いている。
いやいや、かたじけない
というポーズをとっているのではない。
追い抜きざま、ちらりの視線の片隅にそのシルエットをとらえる。
やはり、そうか。
この町の歩道で、ゆっくり歩いている人が片手にかざしているのは、スマホ。
メール、ライン、WEB、中には電子書籍や漫画、そしてゲーム。
寸暇を惜しんで、それこそ、歩くヒマも惜しんで、バッテリーの電力を消費している。
彼らの前には道が続く。
それはローマにつながっていないが、閑散として開けている。
なぜならば、それは「スマ歩族」がゆっくり歩いているからだ。
そして、彼らの後ろには「スマ歩渋滞」ができる。
「スマ歩族」はいったいどれくらい、ゆっくり歩いているのか。
ある休日、周囲に誰もいない広場で、歩きながらスマホを使う速度を計測した。
片手にはスマホ。
左腕にはガーミンフォアアスリート。
ランニング状態をチェックするGPS腕時計だ。
このGPSはリアルタイムの速度が、1kmあたり何分何秒ペースかという数値で表示される。
マラソンの練習と本番には、欠かせないものである。
まず、通常の速さを測る。
スマホはポケットにしまう。
気合いを入れず、腕不利は抑えて、地下鉄のコンコースを歩いていることを思い描いて。
1kmあたり、10'30~11'30
つづいてスマホを右手に持ち、スマ歩族となる。
はじめは、1kmあたり12'00
つづいて、メールを読む
だんだんとスピードが落ちて、最も遅い場合、1kmあたり 18'00
時速に換算すると以下のようになる。
通常時 時速 5.7~5.2km
スマ歩時 時速 5~3.3km
高速道路で自動車を最低速度より遅く走らせるのは違法だが、スマ歩族が町をどんなに遅く歩いても咎められない。
ただし、苦々しく思っている人はいるだろう。
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