マイホームコタツ
もう随分、家に炬燵がない。
昔の家にコタツがあったように、今の家庭にはエアコンがある。
いやいや、エアコンでは足下が寒いよ
という家では、電気カーペットや床暖房がコタツに取って代わった。
床暖房はクールだが、新築で備え付けられていない場合、なかなか手が出せるものではない。
電気カーペットというやつはいただけない。
そもそも、見た目が貧しい。
木目調の模様が入っていたりするが、家のフローリングと色が合わないし、置き場所の制約により、床の木目と直角になったりしてわびしくなる。
夏場にしまう場所がない。
従って、そのまま機能していない季節も敷いてある。
だから、プラモデルを組み立てている時に、接着剤をこぼしてビニルが剥けてしまった。
小学校の頃住んでいた山口県の盆地では、雪が積もるとかまくらを造って、その中にコタツをもちこんでトランプをした。
上級生のお兄ちゃんたちが、こしらえてコタツまでセッティングされたところで入りに行ったので、どうやって作ったのかは知らない。
今思うのは、あの時の電源はどうしていたのだろう。
あるいは電源は引かず、あんかでも入れていたのか。
実家にはずっとコタツがあった。
春夏秋は普通のテーブルだが、冬になるとコタツユニットを父が物置から出してきて取り付ける。
コタツユニットは、長年にわたり家族に蹴られてボコボコになっている。
母が押し入れの奥に仕舞っておいたコタツ布団を敷く。
コタツの中にはテリトリーがある。
足を伸ばして 誰かに当たろうものなら、
「おおばんとったらいけんわぁね」
(大きな場所をとってはいけませんよ)
と山口弁で怒られた。
コタツで育ったせいか、今でもテリトリーが気になって仕方がない。
新幹線ではとなりの人の足が、僕の領土に入っていないかが気になる。
職場では、となりの人の書類が境界線を越えていると、表情が曇る。
日本の部屋は四角い。
コタツは四角形であり、その1つの辺はテレビを背にすることになる。
その席からテレビを見るには、後ろを振り向かなければならない。
その一番悪い席は、末っ子の常席だ。
エクソシストの少女のように、ぎーっと首は回らないので、うつぶせに寝そべって上目遣いで見ていた。
4人家族だったが、5人家族の家はどうやって入るんだろうといつも考えていた。
家族が出払っている日。
思い切り足を伸ばせた時は、尾崎豊じゃないけど、ちょっとだけ大人になれた気がした。
清志郎はクルマの中で寝たと歌っている。
僕は一人暮らしを始めて4年間、冬場は毎日コタツの中で寝た。
こどもの頃、かくれんぼでコタツに隠れて頭を火傷。
コタツの網の目にハゲができた友達がいたので、頭から入るのだけはやめておいた。
今でもコタツハゲという言葉を聞くと、切ない気持ちになる。
ってだいたい聞くことはないが・・
初めからコタツで寝ようと思って寝るのではなく、いつの間にか寝てしまう。
来る日も来る日も。
だから冬場は布団を敷いたことがなかった。
男の子はコタツで寝ると○○が□□なるよ。
とよく言われたが、あれは本当なのだろうか?
「夕方に口笛を吹くと蛇がくる」
のようなもので、コタツの中で寝てはいけないという、昔の人の知恵なのではないかと疑っている。
冬場になると時々、風呂で寝てしまうのは、コタツが恋しいのかも知れない。
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