ギター一閃 楽屋から現れたリッチー
本編が終わると、数人のレインボー・ファンが出口へと急ぐ。
福岡県の端や他県から来ているファンは、乗り継ぎの最終電車やバスに間に合うためには、アンコールまで残ることができないのである。
もったいない。
代わりに聴いてあげるのに。
朝礼で知らされていた「アンコール2回」が終わり客電が点いたのを確認して、今日初めて場内へ入る。
ここからはチーフの指示があった通り、迅速に観客を退出させなければならない。
かつて北海道で起きた事故は、ステージに向かって詰めかけた後方の観客によって将棋倒しが起こり、1人のファンが死亡した。
とにかく何事も起こらぬうちに、ファンを外に出して無事故で切り抜けたい。
ようやく場内に入ることができて嬉しい。
しかし、もうリッチー・ブラックモアは楽屋に引き揚げており、2度と出てくることはない。
そのステージには、撤収のためにアルバイト・スタッフが入っている。
「立ち止まらず、早く帰ってくださ~い」
聴衆に帰宅を促す。
とぼとぼと出口を目指す者。
名残惜しそうに、時おりステージをふり返る者。
スマホはない時代なので、念のために写真を撮る者は居ない。
ツアー・スタッフが主だった楽器を搬出したのだろう。
アルバイトがスピーカーやアンプと言った大物の搬出を前にして、段取りの指示を待っている。
事前の指示を忠実に守っている警備員の声かけにより、客席からは順調に客が引いている。
その数、3分の1ほどになった。
その時だ。
狂気の幕が開いた
ギュイーン
スピーカーから鳴り響く轟音
その音の主は誰にでも想像がついた
ステージに目が行く。
出た!
そこには何食わぬ顔をしたリッチー・ブラックモア
なにか問題ある?
とでも言わんばかりの素っ頓狂な無表情
ギュイーン
ががが ギュイーン
ギター一閃
たった1人で右の袖から現れたリッチー
リッチーまだ懲りてないのか
次の瞬間、主催者にとって悪夢の事態
ゆるやかなクラシック音楽にかぶって、鳴り響くギター
なにごとだ?
もしかして!
そのかすかな音を聞きつけて逆流してくる聴衆
完全に冷静さを失っている
「帰ってください」
「入らないでください」
せき止める係員
しかし、その静止に従う者はいない
どけ、きさん(そこをどいてください。あなた)
数名の係員は客から殴り倒されている
かつての事故の反省にたち整然と取り仕切られたライブが想定通り常識的に終わった後、かつての事故の再現を狙ったかのような常識を疑われる行為が破る
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