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2014年2月14日 (金)

その矢はなぜ、進路を変えたのか?

弓道の射場から安土までの距離は28m。
その間の矢道は草が生い茂っている。
両脇はせん定も受けていない木々が野放しに生い茂って、グラウンドとの境目を演出している。

矢道の真ん中に立ち見上げると、両側の林の隙間に遠近法で楕円形に切り取られた青空がのぞく。
ジュラルミン製の矢をつがえると、そのわずかな空に向かって狙いをつける。
かつては18kgを引いていた時もあったが、型を崩してからは女の子でも引けそうな14kgがあてがわれていた。

15kgのスズキがあれくらいならば、もう少し引いた方がいいだろう。
引き代にしていえば、大三の位置くらいまで引き絞り、林と林の中間目がけて弦を離した。
それが10秒前。

だがここで山からの風が吹いた。
想定外の風だ。
上空にそんな風が吹くとは、知らなかった。
それは、これまで空に向かって矢を射ることはなかったからだ。
弓道という競技では、風の影響を受けることは想定していない。

放った矢はみるみる風に流されて、安土に向かって左の方へと押しやられていく。
そこには、必修クラブを終えてきた陸上部員がアップを始めたグラウンド。

えっ?

それは、冷静な想像力を持つ17歳ならば、遭遇しなかっただろう事態。
一年に一度、何かをやらかす悪いクセがここに出た。
などと生やさしい話ではない。

ジュラルミン製の矢。
それほど先端は鋭利でないにせよ、高さ30mほどに打ち上げられた矢の威力は想像が付く。

矢沢永吉ではないが、時間よ止まれ!
と言えればよかったのだが、それは敵わない。

頂点に達した矢は、グラウンドに向かって落下を始めた・・
そこへ、10人ほどの陸上部員がさしかかる。

ゴルフの経験を積んだ大人になってからであれば、
ふぉあー
と叫んだかも知れないが、

この期に及んで
「あぶない!」
と叫ぶこともできなかった。

矢は地面まであと10mに迫った。
すると、なぜか矢は勢いを失ったかのように進路を変え、陸上部の隊列が通り過ぎたところに落ちた。

ガシャン

晴れつづきで固くなった地面に矢は刺さることなく、横たわった。

ほっとしたのもつかの間、今度はなんとかこれを
なかったことにしなければ ^^;)
と思ったところに、必修クラブから引き揚げてきた弓道部員が通りかかり、矢をすかさず拾い上げた。

「なんしよっと~ 急に矢が落ちてきたけん、びっくりしたばい」

ありがとう・・・
ベリー安堵してただ、うなずくだけだった。

この時はきっと守護霊のおじいちゃんが、矢の行方を曲げてくれたのだろう。
ほら、あなたの後ろに・・
 

おわり

*本編はフィクションです

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