1984年、春、沖縄 ジャッキーのビフテキ
ビフテキを初めて、自らの可処分所得で食べたのは「1984年春、沖縄」だった。
うららかな春の休日。
半袖で過ごせる陽気だが、まだTシャツが体にへばり付くこともない。
とーふちゃんぷるーやブルーシールアイスにKINGバーガーで、すっかり沖縄の食を満喫したと思っていた僕は、旅行最終日、身を寄せいていた沖縄在住の親友から魅力的な提案を受ける。
「今晩は最後やけんビフテキば、食べにいかんや?」
お お ぉ よかねぇ、よかばってん・・・
口ごもっているのは、財布に自信がなかったからだ。
レストランのメニューで最高級のビフテキについていた値段は、5,000円が相場という時代。
それをしり目にカレーや魚フライ定食を注文するのが関の山。
ビフテキは、まだまだ高嶺の花。
そんな心配を見透かした彼
「大丈夫って、そん店は安かけん。そん代わりめし時は混むけん、外してから遅ぉいくばってん、よかや?」
その晩、22時を回って那覇市のジャッキーで食べたビフテキは、今も生涯最高のビフテキ。
記憶が確かならば、店で最高級のテンダーロインが1,600円程度だった。
牛肉輸入が自由化される7年前。
本土で食べれば6,000円、7,000円を申し受けますと言ったところだ。
栄枯盛衰の激しい飲食店業界だが、30年経った今もその店「ジャッキーステーキハウス」はそこにある。
その価格と美味さが、他を圧倒しているからだろう。
【 日本における牛肉の歴史 】
江戸時代
日本各地で肥育農家が起きる。
1971年
マクドナルドが日本出店。
ここにハンバーガーチェーンの歴史が始まる。
1973年
吉野家FC1号店開店。
ここに牛丼チェーンの歴史が始まる。
1991年
牛肉輸入自由化
家庭でもレストランでも、牛肉はハレの日のごちそうから、普段のごちそうにお座敷を替えた。
2003年
BSEの影響で、アメリカ産牛肉の輸入が停まる。
アメリカ産にこだわり、一時的に牛丼をメニューから消した吉野家は、他社チェーン店に大躍進の機会を与えてしまった。
2007年
農水省が和牛表示のガイドラインを周知。
海外の肥育農家に日本の「和牛」遺伝子が流出し、今や日本の和牛は海外の和牛と競合関係にある。
2013年
数多くの有名レストランが牛肉の表示を偽装していたことが発覚した。
2014年
牛肉の関税を巡るTPP交渉が行われている。
牛肉を食べようと思えば、いつでも食べられる豊かな国、日本。
テンダーロインはムリとしても、ハンバーガーに180円出せば、牛肉を味わえる。
いつしか、牛肉は憧れの座を降り、野菜が美味しいと感じる体に「悪くないね」と思っていた時、突然、気が変わった。
つづく
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