巧遅拙速にしかず
システム担当者はラスト1マイルが最も大変なことを知っている。
「ラスト1マイル」とは、目標達成まであとわずかのところに待ちかまえる難題。
ラスト1マイルは、道のりとしては全行程の5%だとしても、それにかかる工数は全体の30%に及ぶ。
例外をつぶすこと。
問題を想定した対応。
これこそが、もっとも大変なことだ。
システム担当者はシステムのプロ。
自分が苦労をしているから、他人の苦労もわかる。
いつもは作り手だが、いざユーザー側に回った時も、作り手を思いやることができる。
だが、厄介なのはユーザー、そしてシステムの基礎を学んでいないシステム担当者。
すなわち、アマの人たちだ。
アマチュアは、ものごとを複雑にする
プロこそが、ものごとをシンプルにできる
「これまでの事例は、1つのエクセルファイルに記録してあります。
事例をしらべる場合は、任意の列を選択して [Ctrl]+[F]でキーワード検索してください」
佐藤さんが、説明している。
彼はさらにつづける。
新しい仕組みは作りませんから、誰かが手間暇をかけることもありません。
完璧なものとは言えませんが、使い手が少し工夫すれば、十分実用性のある事例集として使えると思います。
新しい仕組みを作るとなると手間暇、コストがかかります。
それは、既に管理しているものとの二重管理にもなるわけです。
既にある記録を閲覧していただけば、二重管理になりません。
組織内における情報共有の手段を検討するよう指示された佐藤さん。
既に存在している運用資料を使うことで、新たな仕組みを作らない方法を上申した。
世の中の移り変わりは速い。
だから、だいたいでいい。
この"だいたいでいい"という考え方は、現代に始まったのではない。
昔のひとはそれを「巧遅拙速にしかず」と言った。
完璧だが仕上がりが遅いよりも、少々拙くても速いほうがいいという意味だ。
ところが、これにクレームが付く。
アマのスズキ課長だ。
それって、記録しただけじゃないか。
(だから、そう言っているのに)
これに、プロのタナカ課長がつづく。
[Ctrl]+[F]で検索したら、膨大な件数がヒットするよ。
その中からいちいち、探していられないよ。
(大げさな・・)
アマチュアがものごとを混ぜ返すのは仕方がない。
スキルがないのだから。
だが、困るのはプロで混ぜ返す人だ。
そういう人を「プロアマ」という。
実は、プロの九割が「プロアマ」である。
平素は、平易なことばでシンプルに説明しているプロの顔を持っている。
だが、ひとたび独壇場を与えられると、人が変わったように多弁になる。
たくさん話しているうちに、たくさんの事例と知識を連ねたほうが、かっこいいという錯覚に陥る。
これを「自分に酔う」と言う。
結果的に、話していることは「告白病」患者の駄弁と変わらなくなる。
一方、批判されたほうは、面白いわけがない。
誰も得をしていないし、楽しくもない。
なに一つ建設的ではない。
アマチュアは、ものごとを複雑にする
プロこそが、ものごとをシンプルにできる
だが、ものごとをシンプルにしようという、筋金入りのプロは少ない。
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