川棚あんでるせん 生きる力がみなぎる場所
「こちらにどうぞ~」
奥さんから待望の一声がかかる。
この奥さんには、なにか見切られている気がしてならない。
異能マジシャンのそばにいることで、なにか特殊な能力を身につけているのではないか。
異能マジシャンのそばにいることで、なにか特殊な能力を身につけているのではないか。
マジックショーはカウンターの中で行われる。
カウンター前、最前列だけが着席。
その後ろはすべて立ち見。
あてがわれた席はカウンターの一番右側。
端っこだが、見づらいことはない。
右に人がいない分、気楽だ。
もう少し、右に行ってもいいな。そう考えていたら
「椅子は動かさないでくださいね」
奥さんから速攻で注意喚起。
カウンターの着席位置が決まると、その隙間に後列の人が来るよう、観客スタンドが造られていくからだ。
カウンターに座るメリットは、体が楽というだけではない。
マジックに使う道具を提供できる。
「どなたか千円札ありますか?」
マジシャンが協力を求めると、カウンター客が一斉に財布を取り出す。
いち早く出した僕の千円札が採用されて、マジックの題材となる。
別の客が出した100円玉が僕の千円札を通過して二つにちぎれ、その後、空間を移動して額縁に入り、最後には元の状態に戻って、今財布に入っている。
「財布に入れておくと、お金たまりますよ」
とマジシャンのサイン入りだ。
マジシャンはずっと話している。
彼は完了形で話す
それは、人を喜ばせる
一言一句聞き漏らしたくない
名言の数々に、力がみなぎるのを感じる
ここは生きる力がみなぎる場所だ
去年、初めて来た時は、どえらいものを見てしまった、そう呆気にとられるだけだった。
今年2度めの経験は少し違っていた。
去年と今年で、話しの内容が違っていたのかも知れない。
話しは同じだが、去年は目を奪われていて、聞こえていなかったのかも知れない。
あるいは、去年の自分には感じる力が弱かったのかも知れない。
すべての演目が終わり、マジシャンがねじ曲げたフォークを記念に買い求め、店を出たのは16:30。
店に入ってから5時間半。去年より30分長い。
川棚駅から1時間に1本の佐世保行きまで、駅の待合室で考えていた。
人は、ほどほどにバタバタするくらいがいい
ヒマだと余計なことば考える
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