「精密検査」 三部構成
入院1週間前
文学の世界では、トンネルを抜けるとそこは雪国だが、検査室の自動ドアを開けると、そこは検査を待つ人で廊下が溢れていた。
ストレッチャーに乗った人もいる。
車いすに乗った人は点滴のバーを握っている。
大半いや100%がお年寄りだ。
病人に囲まれて、アドレナリンが出る人はいない。
静かに順番を待つ患者に囲まれて、気が滅入ってきた。
手術は全身麻酔で行われる。
僕はただ寝ているだけだから、痛いもかゆいもない。
だがこの後、初体験となる検査は意識がある状態で行われる
今日が1番大変な日なのかもしれないね^^;)
などと呑気な感想を書き留めていたが、それはとんでもない勘違いだった。
「検査室が2つしかないから混んでいるんですよ」
看護師だろうか、ストレッチャーに乗ったおばあさんを慰めるように話しかけている。
(これは病院内のヘルパーさんだった)
これは長丁場になるかも知れない。
手元にはスマホしかない。
飛行機モードに切り替えたうえで、Kindleアプリの電子書籍を読むことはできるが、周囲には納得を得られないだろう。紙の本が必要だった。
今日は手術に向けたいわゆる「精密検査」
だが、そのような名詞を使う人は院内にはどこにもいない。
三部構成の第一幕は初体験のCT
中央を丸くくり抜いたドーナツのオバケのような筐体から、ベッドが突き出ている
見た目はMRIと変わらない
違うのはMRIは磁気を使うのに対して、CTはX線を使うということだ。
「そのまま、ベッドにお上がり下さい」
え、そうなの?
検査着に着換えるのかと身構えていたので拍子抜けする。
金属の類はすべて外さなければいけないMRIとは違い、CTでは金属を身につけていても構わないのである。
検査技師が検査の説明を終えるや、すぐに実情を訴える。
MRIは3回うけたことがあるのですが、入る時に怖くなったことがあるんです
入る時はなるべくゆっくりでお願いします
「わかりました」
この時の技師はとても丁寧な人だったことは、後でわかる。
この後、一連の加療のなかで何度かCTを受けるのだが
「MRIとは違ってあっという間ですから、心配しすぎですよ」
という反応が返ってきた。
中で風を送ったり、明るくしたりすることはできますか?
「位置を確認するために、十字の赤い線をあてますが・・」
意図が伝わっていない・・・
軽く目を閉じてください
口は閉じてください
こちらの不安をよそに、ルーチンの手順が粛々と進んでいく。
ベッドがスライドする
?
まったく怖くないぞ
周囲は明るいし狭さも感じない
これは楽勝じゃないか。
「それでは、検査初めて行きます」
マイクを通して技師の声が響いた
まだ始まってなかったのか・・・
それでも、CTは呆気なく終わった。
X線の部屋を出て受付に戻り、CTが終わったことを報告
すると、今度はCTの時にはなかった問診票を渡された。
これから第二幕「通常MRI」
ヘッドホンを希望しますか?
という設問は初めてだ。
恐らく、工事現場のような音がうるさいから耳栓代わりなのだろう。
そもそも、過去3回のMRIにおいて「音」は問題ではない。
うるさくて怖いということはないのだ。
返ってヘッドホンを付けることで狭窄感が増すような気がして「いいえ」に○をつけた。
閉所恐怖症ですか?
事実をいえば「いいえ」だが、MRIの狭さが苦手なことも事実。
○をつけた上、中に入る時はゆっくりでお願いします
手書きでコメントを書いた。
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