バリウム検査が20年経っても技術革新しない理由
検査室にあったのは、おなじみの機器。
期待はしていなかったが、バリウム検査に技術革新は起きていないようだ。
予約時間を過ぎること15分。
検査着に着換えて、ようやくバリウム検査が始まる。
「メガネも外してください」
指示に従い、機械のヨコに立つ。
カップホルダーには、既にバリウムがたっぷりと注がれたコップが待っている。
「あ、ちょっと待ってください」
胃袋を押さえつける孫の手にトラックボールが付いたようアームが、ふらふらと動いている。
技師がそれを調整した。
機械が老朽化しているのでなければいいが。
発泡剤をさらさらと口に含み、少量の水で流し込む。
この時点でげっぷが襲ってくるが、これを耐えなければ痛い目に遭うことを経験で知っている。
バリウムを一気に飲む。
まずいものではない。かと言っていちごフレーバーも付いていない。
「ごくごくといっちゃってください」
となりの部屋の小窓からこちらを覗いている検査技師の声が、スピーカーから聞こえる。
なにが、ごくごくだばか
と20年前ならばつっこむところだが、もうそれほど血気はない。
1995年夏、暑いナゴヤの病院にあった機械となんら変わっていない。
この20年間には、ベッドが動くタイプの機械も経験した。
しかし、人はただ寝てればいいという「全自動」には至っていない。
全自動にならない理由は、胃部の全面にバリウムを粘着させることが難しいからだ。
カメラも追随して回る機械にすれば「全自動」もあり得るのだろうが、NASAの無重力訓練機のようなものにしなければならない。
それでは機械が高額になり、普及は難しいだろう。
MRIやCTが苦手という人がいるように、閉所が苦手な人にとっては敷居が高くなると言う難点もある。
こちら向きに回ってください
ちょっと右
あ、行き過ぎ
はいそこで、息を止めて
はい楽にして
毎日、これを言う方も飽きるだろう。
よし、今日は"こっそりげっぷ"もしていない。
(だいたい、ばれる)
呼吸で自然に抜けているのか、げっぷのむかつきも収まってきた。
これは、いいんだよな。
そう思った時だ。
「ちょっと、空気が抜けて来ましたね」
技師がドアを開けて、追加の発泡剤を持ってきた。
そういえば、胃を押さえ付けるトラックボールの出番がなかったな。
検査が終わったら食べようと思っていた、マックのソーセージエッグマフィンを食べていて思い出した。
本当に機械が壊れていたのかも知れない。
バリウムや内視鏡に代わる方法がないわけではない。
血液検査により胃部検査を行うことはできるが、それでは食道や十二指腸の情報が得られない。
ある程度の苦痛は仕方ない。
早期発見には代えられない。
あれから20年。
シマちゃんとは職場が離れ、もう随分会っていない。
彼ならば、この状況をなんとコメントするだろうか。
次の20年に向けて、彼がなんと言うか聞いてみたくなった。
おわり
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