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2015年10月14日 (水)

満面の笑みを浮かべ、手術棟へ向かう患者

13:00
手術予定時間まで1時間
準備OK
心はおちついている

はみがき粉、歯ブラシ、コップ、ティッシュといった日用品は一つ一つに「千葉龍一サン」と石川さんが書いてくれたシールを貼って、一足先にICUへ運ばれている。
所せましとモノが並んでいた床頭台* は閑散とした。
本は読めないだろうと思い、たかぎなおこの漫画も入れなかった。

*床頭台 病室のベッドそばに置かれている戸棚

13:20
「準備するよう連絡がありました」
石川さんが血中酸素を測りに来た。
こう、ほぼ日手帳に書き留めているが記憶がない。
細かい検査は数限りなくあるから覚えていないのか。
それとも、緊張し始めていたのだろうか。

13:45
「14:15入りで呼ばれました」
さぁ、いよいよだ
だが、僕が意気込んでもしょうがない
気を紛らすため、読んでいた漫画に再び目を落とす

14:00
石川さんがやって来る
出番か?
ベッドから降りて靴を履こうとすると
「14:30に変更になりました」

僕の手術は、牧野医師らにとって今日2件め。
前の手術の進行によっては、夕方にずれ込むこともあると聞いていたので、これくらいの遅れは織り込み済み。
30分程度の遅れと言うことは、前の手術はほぼ順調ということになる。
見知らぬ誰かの手術だが、よかったなと思う。

 

今日明日はICU暮らし。
次にここに戻ってくるのは2日後になる。
担当医が来る度に退院を直訴している隣りのひょうちゃんと、また会うことがあるだろうか。
次に会う時は、もう少し静かに願いたいな。
そんなことを考えているところに家族がやって来た。

手術終了に間に合うよう来てくれればよかったのだが、リスクの低い手術とは言え、手術前に来てくれたのはやはり嬉しい。

さらに予定が押して14:45
いよいよ、手術室からの呼び出しがかかった。
相部屋の誰とも会話していないので、誰かから「行ってらっしゃい」と声がかかることもない。
相部屋は和気あいあいというのは「ナースのお仕事」の世界だけだ。

ベッドから降りて素足に入院用に買った靴を履く
手荷物はない
すたすたと自分の足で歩き、平原さんと石川さんの先導に従って手術棟へ向かう

なんか変だな
思い描いていたイメージと違う

普通、手術というのはストレッチャーに乗り、家族に手でも取られながら、ものものしく廊下を進むのではないのか。
なぜ僕は自分の靴ですたすたと歩いているのだ?
そう考えると、可笑しくて吹き出しそうになる。

満面の笑みを浮かべている脳腫瘍摘出手術前の患者というのも妙な感じである。

家族の立ち入りは途中のエレベーターホールまで。
じゃあねと手を振ってエレベーターに乗り込み、手術室のフロアに着く。

「千葉龍一さんをお連れしました」
手術棟の受付で、平原さんが手続きをする。

「頑張ってくださいね」
新人の石川さんがキックボタンを蹴ると、手術室につながる廊下の自動扉が開いた。

やはり、緊張している
でも緊張しても仕方がない
緊張している自分を自覚しないよう、目の前の一歩のことだけを考えるようにする

扉の向こう側には、ICU担当看護師が待ち構えていた
病棟看護師の立ち入りはそこまで
「ありがとうございます」
2人に礼を言って歩き出す

 

ここから先は未知の領域
生涯初めての手術、全身麻酔
といったことは、その時何も考えていなかった

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