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2015年10月27日 (火)

執刀医のように現れる笑う患者 初めての手術台

ICU担当の女性看護師が2人。
手術室まで僕を先導している。

僕はというと、雑然とした廊下を自分の足で淡々と歩き、1分も歩かないうちに手術室の前に来た。
手術室のドアは広く開いている。
ストレッチャーを真横にしても、通れるくらいだ。
それは看護師がキックボタンで開けたのか、記憶がない。


看護師の役目はそこまでで、手術室に僕1人が入っていく。
正面にはこれから僕が横たわるベッド。
それを取り囲んでいるのは、うすい緑色の手術着に身を包んだチームの皆さん。
ひーふーみー
と数えはしなかったが、10人くらいはいるだろうか。


準備中の手を止めて、お待ちしていました
と言わんばかりに、誰もが僕の方を見て微笑んでいる。
彼らが小難しい顔をしていたら、患者の側が萎縮してしまう。
患者をリラックスさせるためにも、彼らは快活に振る舞っているのだ。
少なくとも、この時の僕にはそう見えた。

にこりと微笑んで、よろしくお願いしますと会釈する。


自分の足ですたすたと歩いて来て、じゃよろしくと言っている僕はあたかも、これからメスを執る執刀医のようだ。

ストレッチャーに乗せられて運ばれる患者のような悲壮感はここにない。
思いも掛けぬこの情景が意外で、僕はうけてしまい、満面の笑みを浮かべる。

こんなに笑っている手術前の患者は珍しいな
数人のメンバーはそう思ったかも知れない。


「こちらからお上がりください」
手前にいた目の大きい女性が手招いている。
その後も、全体の進行を取り仕切っていたので、恐らく、一目置かれるポジションにいるのだろう。

ステップの下で靴を脱ぎ、ゆっくりと手術台へと上がる。
生涯で初めてあがる手術台。
ようやく、ここにたどり着いた。

日本人のどれくらいが、一生のうちに1度ここに上がるのかわからないが、少なくとも病理がある以上、上がらないわけにはいかない場所だ。

全幅の信頼を置く医師の手で、次に目覚める頃、僕は健全な状態を取り戻しているだろう。
そう確信していることが、気持ちをしっかりしたものにしている。

「麻酔を担当します***です」
始めに麻酔医が自己紹介する。

よろしくお願いします。

つづいて、いろいろな人たちが挨拶に来る。
メモ帳を持ってくるわけにはいかないし、名刺をくれるわけでもないので、誰がなんと言う名前で、どんな役割の人だったかを記憶していない。
幸いなのは、次々に話しかけてくれるから、緊張する間もないということだ。


それでは、麻酔薬を入れて行きます。
その言葉を最後に、僕の記憶は消える。

麻酔薬が左の腕から入っていく時、あっという間に気持ちよくなり、あとは医師に任せるだけだなと思っていた。

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