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2015年11月23日 (月)

白鵬 猫だまし 2015年流行語大賞

北の湖は昭和の名横綱。
現役当時、大鵬に次ぐ24度の幕内最高優勝を果たしている。
(その後、千代の富士、朝青龍、白鵬が超えていった)

学生横綱の実績により幕下付け出し(例外措置)でデビューした"シード選手"輪島に対して、たたき上げで頂点に並んだ北の湖。

千秋楽に2人が対戦するのは当時の相撲ファンにとって最大の楽しみであった。


その理由は、その対戦がいつも見応えがあったからだ。

変わったり、引いたり、はたいたり、空かしたり。
そういうこすいこと一切なし。
堂々とぶつかり合い、一進一退。

北の湖が寄り切ろうとすると、輪島は俵に足をかけて驚異的な粘りで土俵中央に押し戻す。

おいおい、これまでの14日とまるで違うじゃないか輪島
やればできるじゃん

輪島ファンは苦笑いしながら見ていたが、エリート輪島の本気が引き出されるこの対戦は、固唾を呑み血の気が引くような見応えに溢れていた。

互いの全盛期の対戦成績では、北の湖が大きくリードしている印象があったが、通算対戦ではわずかに輪島が勝ち越している(23勝21敗)


輪島と北の湖は強いうえに、正々堂々とした横綱だった。
これだけの正統派スターが東西に並び立った時代は、それ以来ない。
プロレスで言えば、馬場と猪木が同じ団体にいて、シリーズ最終戦にはシングルで激突するようなものであり、今となっては夢のような時代である。

輪島は引退後、プロレスに転身。
北の湖敏満は相撲界を支えてきた。



2015年11月20日
白鵬の猫だましから3日後。
北の湖敏満理事長が死去、享年62歳。
死因は多臓器不全。

横綱朝青龍の振る舞いを品格を欠くとするメディアの攻撃
時津風部屋力士暴行死事件
八百長問題

北の湖理事長は、難問山積の相撲界を支えてきた。
人は抱える心労の数に反比例して、その寿命を縮める。
白鵬の猫だましは、大相撲の神髄復興を願う北の湖理事長にとって最後の心労となった。



スポーツにおける「楽しむ」という言葉は、しばしば誤解される。
アスリートが言う「楽しみたい」は「納得いくよう力を出し切る」ことで結果的に「楽しかった」と思える心の有り様を端的に言っているのだ。
アスリートには語彙が少ない人が多いので、それをしっかりと自分の言葉で表現できないだけである。


白鵬の猫だましは楽をして結果を求めてしまった。
猫だまし直後、メディアに語った「楽しんでます」は本意ではなかっただろうし、それを聞いた人々の心に意図せぬさざ波を立てた。

無名の高校生の猫だましは笑って済まされるが、横綱の猫だましは軽率に過ぎた。

これが流行語大賞ノミネートの前ならば、まちがいなく「猫だまし」が候補に入っていたはずだ。
町では若いカップルの間で猫だましが流行り、格闘技では猫だましに怯えて、様子をみる試合が増える。
プロレスでは、猫だましで笑いをとるレスラーが出るだろうし、漫才師もこぞって取り入れるだろう。
そうなれば、2015年の流行語大賞は「猫だまし」で決まりだった。

教訓
実るほど頭を垂れる稲穂かな


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