ICUでも、うどんの食べ方がわかりません
「フラット解除の許可が出ました」
ICUに戻って1時間後、看護師から待ちに待った情報が伝達された。
さっそく、バスタオルを持ってきてもらい、小高い枕を作る。
ほんの数cm頭が上がるだけで、ずいぶんと呼吸が楽になる。
こんなに天国とは
生きててよかった
お昼ご飯はうどん
入院して最初に出た、あの汁のない謎のメニューだ。
今日もとん汁らしきものがついているが、それを入れるのか、そっちに入れるのかわからない。
「うどんの食べ方がわかりません」
ICUの看護師に、そんな間の抜けた質問はためらわれる。
この日もまた、麺だけをつるつると吸い込んだ。
奇妙な病院だ。
「なにか希望はありませんか?」
お昼の看護師はずいぶん気を使ってくれる。
それならばと、病室に置いてきたほぼ日手帳が欲しいと言うと、一般病棟看護師が届けてくれた。
今書いているこのあたりは、そうして書き置いた。
書き置いたと言っても、寝たきりなので長文ではなく、キーワード。
手術翌日、そこに書き留めたキーワード以外の出来事は、なにも想起できない。
生命維持機能回復のため、エネルギーがそちらに使われていたのかも知れない。
「音楽でもかけましょうか?」
え?音楽あるんですか、それならばぜひ。
するとどこからかラジカセが運ばれてきて、FM東京をかけてくれた。
その途端、殺風景なICUが、ドラマの中のセットに変わったように見える。
さっきまで白色だったライトが暖色に変わる(気のせい)
こんなドラマセットには、医師の回診が必要だなと思っていたら、副担当の長井医師がやって来た。
「順調ですよ」
午前中の造影MRIのデータを見てきたのだ。
これだけ辛い思いをして、順調じゃないと言われたら今からでもぐれたいところだが、とりあえず想定範囲内の情報にほっとする。
ありがとうございます!
緊急オペがあったらしく、少し疲れている長井医師を心から労った。
18:20
手術後から熱が下がらないため、看護師が氷枕を作ってきてくれた。
こんなに優しくされるのは、いつ以来だろうと考える。
こちらがお金を払っているとはいえ、見ず知らずのおじさんに親切にしていただいて、ありがたいことだ。
20:45
血の塊を含む唾が、あまり出なくなってきた。
助かる。
昨日とくらべてずいぶん快適だ。
とても疲れている
今日はそこそこ眠りたい
両方の鼻には綿球が詰められている。
綿球とは麺かをまん丸にしたもの。
手作りでは、ばっちぃので、綿球2つがパックされてカップに入っている。
商品名は「電子線滅菌済テマカットカップ入り綿球S」
白十字株式会社
あ、ばっちぃからだけじゃなく、手間もカットなんだ。
次々に鼻血が降りてくるので、定期的に取り替える。
看護師さんが交換してくれることもあるが、予備がベッド脇に置いてあり、3時間程度を目安に自分で取り替えていた。
Sと書いてあるのがサイズなのかはわからないが、とにかくけっこう大きい。
これをしばらく入れ続けていると、鼻の穴が大きくなりそうである。
手術後24時間は、この綿球は血が滴るほどで、常に真っ赤だったが、夜になって白い綿球になった。
鼻血が止まったようだ。
手術翌日の夜は、一時間に1度は血の塊を吐き出すために起きたものの、そこそこに眠ることができた。
ティッシュの箱がずいぶん軽くなったこと。
「大」意がいつ訪れるか?
それが少し気がかりだけど。
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