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2015年11月22日 (日)

白鵬の猫だまし 北の湖理事長最期の心労

一生のうち人は猫だましを見ることはあっても、使う人は少ない。
その少ない一人は僕だ。

時は昭和。僕は高校三年生
体育の授業「柔道」で僕は同じ中学校からきたサトウ君と対戦していた。

当時の僕は柔道では向かうところ敵なし。破竹の快進撃を続けていた。
図書館で柔道を研究して、袖釣り込みというワザを覚えていたからだ。


授業で教えるのは背負い投げ、大外刈り。
受験を控えていてムリをしたくない相手は、組み合って牽制するうちに時間切れというのがお約束だ。

組み合うとまず右手で襟。左手で相手の右袖をとる。
襟を引きつける動きを入れると、相手は重心を落として防御する。
すかさず袖を天井に向けてつり上げると、想定していなかった相手はバランスを崩す。
そこで襟をさらに引いて投げると相手はおもしろいように畳に転がった。

しかし、長年の友達であるサトウ君は僕の動きを読んでいて、なかなか畳に転がってくれなかった。

僕らは二人とも近視でメガネをかけているが、柔道ではメガネを外しているため、周りはよく見えない。
だからこそ、僕らは目の前に居る敵に集中していた。

残り時間が少なくなってくる。
もう押さえ込む時間は残っていない。
満を持して、一度かわされた必殺技、袖釣り込みに賭けた。

彼は両手をふりほどき、体を離すことでそのワザを逃れる。
二人の間に距離ができた。

二人で組み合う競技で、身体が離れて距離ができる。
その状況に戸惑った。
プロレスじゃないんだから

再び組み合わなければならないというその時、
ぱんっ
僕は猫だましを繰り出していた。



試合後、友達が次々に感想を言いにやってきた。

いやぁ、おもしろかった
年間ベストバウトだね
みな、大笑いしてたよ

特に猫だましの時は、館内大爆笑。
体育の先生まで苦笑いしていたという。

僕は別に笑いを取りに行ったのではない。
ただ必死だった。勝ちたかったから。
猫だましも図書館の本で知ってはいたが、使おうとは思わなかった。
とっさの行動である。



2015年、僕の仲間に横綱白鵬が加わった。

11月17日、大相撲九州場所10日目
白鵬-栃煌山戦
7月21日の名古屋場所で、白鵬は栃煌山のはたき込みに敗れていた。
その時、白鵬はそう来るかという顔で栃煌山をにらんでいる。


横綱の猫だましに対して、北の湖理事長はこうコメントしている。
「横綱としてやるべきことじゃない。横綱がやるのは前代未聞なんじゃないの?拍手がないじゃない。お客さんはどう見てるか分からないけど」

それはとても感情を押し殺した評論にみえた。

つづく


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