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2015年11月 9日 (月)

ぴんぽんぴんぽん 異常を知らせる心拍モニターが鳴り響く

定時の見回りなのか、担当看護師が来てくれた。
「どうですか?」
と言った途端、少し間があった。
「あ゛」
かすかに、そう聞こえたような気もする。
そして、彼はUターン。
一旦部屋を出て行った。


口の周りから首の辺りまで血だらけの僕をみて、少しびびったのだろう。
恐らく彼はインターン。
まだ、それほど場数は踏んでいない。
医師を呼んできてくれるのだろうか。
そうだったらいいな。

少なくとも、この状況に一定の定義を与えてくれれば、この先心を一つにして苦難に立ち向かうことができる。
この状況が正しいのか、それとも正常の閾値を外れているのか?
突然、放り込まれた地獄に一定の評価が欲しい。


すると間もなく、彼は1人で戻ってきた。
その手には固く絞ったおしぼりを持って。
そして、僕の口の周りから首のあたりまで、乾いてかぴかぴになった血痕を拭き取ってくれる。
それはもちろん親切なのだろうが、あまりのしんどさに恨み節も出た。

血を拭き取って、なかったことにしようって責任逃れじゃないのか?

もちろん、心の叫びだ。
口にはしない。


これって大丈夫なんですかねぇ?
それは口に出して尋ねた。
彼には悪いが、その知識に全幅の信頼を寄せることはできなかったからだ。

「医師に聞いてみますね」
彼はそう言うと、ルーチンをこなす。
体温を測り、心拍数のモニターをチェック。

じょぼ、じょぼ
溜まった小水を違う容器に移し替えているらしい。
やはり、僕は何らかの方法でおしっこをしているんだと、このとき確信した。


それからは、彼が来てくれるのが待ち遠しくなった。
それは30分に1度なのか、あるいは1時間か。
恐らく、夜勤当番の彼は僕以外にも多くの患者を診ているはず。
自力でなんとかなるうちは、あまり世話はかけられない。
気休めのために、その頻度を尋ねる気持ちにはなれなかった。


「医師に確認したところ、大丈夫とのことでした」
次にやってきた時、彼が医師の見解を持ってきてくれた。
そう言ったのは脳神経外科医なのか、それとも、そうではない当直医なのか
そういう細かい情報はもたらされない。

医師がそういうからには大丈夫なのだろう。
だが、僕の容態はさらに悪くなっていた。
さっき拭き取ってもらったばかりだが、もう口の周りには拭き取れなかった血の跡が流れている。
緊張状態がつづき、疲労も激しい。

彼は先ほどと同じように、固く絞ったタオルでそれを拭き取る。
つづいて、検温をして心拍モニターをチェック。

そして、彼が踵を返して灯りのついた廊下へ立ち去ろうとした時だ。
「ぴんぽんぴんぽん」
第三セクターの鉄道で、これから入線するホームの信号機が赤の時に鳴る警告のような音が鳴り響いた。


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